1 はじめに
無戸籍の方は702名にいます(平成29年2月10日現在)。実際にはもっと多いとも言われています。
無戸籍になるケースとして最も多いのは、嫡出推定(民772Ⅱ)により前夫が子の父であると戸籍に記載されることを避けるため、母が出生届を出さないケース(以下「典型ケース」といいます。)になります。
出生届が出されないことにより、子の戸籍は作られず、基本的には住民票も作られません。そのため、無戸籍の子は、さまざまな社会生活上の不利益を被ることになります。
では、典型ケースにおいて、無戸籍状態を解消するためにどのような流れになるのでしょうか。
2 嫡出否認の手続
令和6年4月1日、民法等の一部を改正する法律が施行されたことに伴い、嫡出否認権は、子や母にも認められることになりました(民774)。そこで、母又は子は、元夫と子との父子関係をなくすために、嫡出否認の手続をとることが考えられます。
嫡出否認の手続は、嫡出否認調停と嫡出否認の訴えの2種類ありますが、調停前置主義の関係で、母又は子は、まずは嫡出否認調停を申し立てることになります。
嫡出否認調停においては、①子が元夫の嫡出子であることを否認するという申立の趣旨通りの審判を受けることについて、子又は母(申立人)と元夫(相手方)との間で合意が成立しており、かつ、②子又は母(申立人)と元夫(相手方)との間で、子が元夫の子でないことに争いがなく、③DNA鑑定等により②の事実が認められた場合、合意に相当する審判が出されることになります(家事事件手続法277)。通常は2回程度の調停で終わることが多いところです。
なお、元夫からすれば嫡出否認調停にわざわざ出席するメリットはないとも考えられるところです。しかし、元夫は父子関係がなくなることにより、子を扶養する義務、つまり養育費支払い義務を免れることになります。また、子が元夫の相続人になることも回避できます。このように、元夫側にも、父子関係の消滅により、扶養義務の解放などの利益があります。
3 入籍の手続
嫡出否認調停を経て合意に相当する審判が出て、同審判が確定した場合、母は、出生届出書、審判書、確定証明書を市区町村の窓口に提出することになります。提出すると、数日後、子は母の戸籍に入籍することになります(戸籍法18条1項)。
