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コラム:個人再生手続の流れ

2023.11.25
Ⅰ はじめに

債務整理の場合、任意整理、自己破産、個人再生の3つの手続の中からベストな手続を選択することになります。例えば、住宅ローンを組んでマイホームを取得したが、借金が膨らんでしまった場合、個人再生を行うのがもっともよい方法になります。以下では、具体例に基づき、個人再生の手続を説明していきます。

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Ⅱ 具体例

甲さんは40歳、正社員として運送会社に勤めて20年になります。妻との間には10歳と7歳の男の子がおり、3年前に30年の住宅ローンを組んで念願のマイホームを建てました。

ところが、ここ最近、会社の業績が悪化し、ボーナスが減少し、ボーナス払いの月の支払いが厳しくなりました。その穴埋めのために、銀行や消費者金融から借りるようになり、住宅ローン以外の借金は600万円に膨らみました。

子ども達は小学校になじんでおり、自宅を手放すとなれば転向しなくてはいけない可能性もあるため、マイホームを手放すことなく、債務を整理することを希望しています。

Ⅲ とるべき手段

一般論として、債務整理の場合、任意整理、自己破産、個人再生という3つ手段から選択することになります(それぞれのメリット・デメリットは関連記事をご参照ください)。

甲さんは、マイホームを残したいと望んでいますが、自己破産の場合はマイホームを手放すことになってしまうので、任意整理か個人再生を選択することになります。

そして、任意整理の場合、将来発生する利息はカットできても、元本を減らすことはできません。そのため、甲さんのように借金がたくさんある方は、どうしても毎月の返済額が多くなるので、任意整理は得策ではありません。

他方で、個人再生の場合、住宅ローンはこれまでどおり払いつつ、住宅ローン以外の負債を5分の1程度に減らすことができるので、毎月の返済額はぐっと減ることになります。

したがって、甲さんの場合、住宅資金特別条項付きの個人再生を進めるのがベストの選択になります。

ところで、個人再生の大まかな流れとしては、➀受任通知→②申立て→③手続開始決定→➃債権届出期間・異議伸述期間、➄再生計画案の作成→⑥付議決定→⑦再生計画の認可→➇再生計画に基づく返済となります。

以下では、個人再生について手続ごとに説明をしていきます。

なお、個人再生は、小規模個人再生、給与所得者等再生の2種類ありますが、一般的には小規模個人再生を利用することの方が多いので、小規模個人再生を念頭に説明していきます。

Ⅳ 受任通知

個人再生をすることになったらまずは債権者に対し受任通知を送ることになります。これは自己破産と同様です。

受任通知を送ることにより、手続が完了するまでの間、支払いを停止することができます。支払停止により、生活を立て直す余裕ができることになります。

なお、住宅ローン債権者に対しては、今後も従前どおり返済を続けていくこと、したがって今後の個人再生の手続に協力を求める旨を記載した受任通知を別途送ることになります。

Ⅴ 申立て

1 作成書類一覧

個人再生申立ての場合、以下の書類を作成することになります。

①申立書
②債権者一覧表
③陳述書
④履行可能性に関する陳述書
⑤家計収支表
⑥財産目録
⑦清算価値算出シート
⑧弁済許可申立書

なお、⑧弁済許可申立書は、住宅資金特別条項を付ける場合に必要な書類となります。詳細は関連記事をご参照ください。

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✔住宅資金特別条項についての解説はこちら▶コラム:個人再生と住宅ローン特則(住宅資金特別条項)

2 各書類の説明

(1)債権者一覧表

債権者一覧表は、各債権者から取り寄せた債権調査票をもとに作成することになります。すべての債権調査票を取り寄せるのに1~2か月かかります。

(2)陳述書、履行可能性に関する陳述書

陳述書、履行可能性に関する陳述書については、世帯全員の住民票(マイナンバー省略)、直近2か月分の給料明細、直近2年分の源泉徴収票(所得証明書)をもとに作成することになります。

(3)財産目録、清算価値算出シート

財産目録、清算価値算出シートについては、預金通帳(過去1年分)、保険証書(解約返戻金証明書を含む)、車検証、査定書(初年度登録が7年未満)、退職金の額が分かる書類(勤続年数が5年以上の場合)、全部事項証明書・固定資産評価証明書・査定書(自宅が所有している場合)をもとに作成することになります。

(4)弁済許可申立書

弁済許可申立書は、住宅ローン契約書や返済表をもとに作成することになります。

Ⅵ 手続開始決定

1 手続開始要件

裁判所は、申立書類一式を審査し、手続開始要件を充足している場合、個人再生手続の開始決定を行います。

開始決定の要件のうち、特に重要な要件は次の2つです。

(1)反復継続した収入の見込み

まず、債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること(民事再生法221条2項)が必要です。

例えば、サラリーマンで、現在の月の手取りが20万円を超えており、勤続年数が3年以上の場合は、将来にわたって安定した収入を得る見込みが高いといえそうです。

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✔バイト、パート、歩合給の方についての解説はこちら▶コラム:バイト、パート、歩合給の方の個人再生

(2)5000万円要件

次に、無担保の債権の総額が5000万円を超えていないことが必要です(民事再生法221条3項)。

実務では、個人事業主の方を除き、住宅ローンを除いた再生債権が5000万円を超えるケースはほぼありません。

もっとも、例えば、夫が住宅ローンを借りて、妻がその連帯保証人になるケースで、妻が自身の借入れについて個人再生を申し立てる場合は注意が必要となります。住宅ローンの連帯保証債務額も5000万円要件の審査に際し考慮されるからです。

2 家計収支表、積立ての指示

裁判所は、手続開始要件を充足すると判断した場合、開始決定を出すことになります。その際、2つの指示がなされることになります。

(1)家計収支表の作成

裁判所は、開始決定に際し、申立人に対し、認可決定までの間、家計収支表を作成するよう求めます。そして、申立人は、後述の再生計画案提出時に、水道光熱費などの裏付け資料、給料明細と一緒に家計収支表を提出しなければなりません。

(2)積立て

裁判所は、申立人に対し、認可決定までの間、毎月支払うことになる金額を積み立てることも指示することになります。積立ては、積立て専用の口座を設けて、そこに毎月決まった金額を入金することになります。中には、代理人の預かり金口座に入金してもらうこともあります。

3 補足~個人再生委員について

なお、個人再生委員は、東京地裁管内では全ての事件に就くことになりますが、大阪地裁管内では、弁護士による申立ての場合は原則として就かず、申立人本人や司法書士よる申立の場合に限って就くことになります。個人再生委員が就く場合、別途、20~30万円の予納金を納めなければなりません。

Ⅶ 債権届期間

裁判所は、個人再生手続を開始する際、債権届出期間を設定することになります。

そして、裁判所は、債権者一覧表に記載されている各債権者に対し、開始決定書とともに、債権届出書の書式送ることになります。

債権者は、開始決定書とともに送られてきた債権者一覧表に記載してある金額を確認し、その金額に不服がある場合は届出期間内に債権届出をしなければいけません。

なお、個人再生手続の場合は再生債権のみなし届出が定められているので、債権者が債権届出書を提出しなかった場合、債権者一覧表に記載してある金額の届出をしたものとみなされます(民事再生法225条)。

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Ⅷ 異議申述期間

裁判所は、個人再生手続を開始する際、異議申述期間も設定することになります。申立人側は、債権者から提出された債権届出を確認し、届出額に不服がある場合、期間内に異議書を提出しなければいけません。

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✔債権届出に対する異議申述についての解説記事はこちら▶コラム:債権届出に対する異議申述と再生債権の評価

Ⅸ 再生計画案の提出

1 再生計画案の作成

前述のとおり、申立人は、債権届出期間経過後、裁判所から送られてきた債権届出書について、金額に誤りがないかを確認した上で、再生計画案を作成することになります。

また、申立人は、再生計画案を作成する場合、弁済額は最低弁済額か清算価値のいずれか高い方としなければなりません(詳細は後述のとおり)。

その上で、弁済額について、原則3年(36か月)、例外として特別の事情が認められる場合は最長5年(60か月)の返済計画を策定することになります。

なお、返済は、3か月おきに3か月分まとめて返済することも可能です。振込手数料は申立人の負担となりますので、毎月返済するとなれば、振込手数料分、負担が増えることになりますので、3か月おきの返済とすることにより振込手数料の負担を減らすことができます。

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✔弁済期間についての解説記事はこちら▶コラム:個人再生の弁済期間

2 3点セット

申立人は、裁判所に対し、作成した再生計画案とともに家計収支表(裏付け資料含む)、積立用の通帳写しの3点セットを提出します。

Ⅹ 書面による決議に付する決定(付議決定)

1 最低弁済額or清算価値

(1)総論

申立人は、再生債権者に対し、法定された最低弁済額と清算価値のいずれか高い方を払わなければいけません(民事再生法231条2項3号・4号、174条2項4号)。そこで、裁判所は、再生計画案がこの要件を満たしているか審査することになります。

(2)最低弁済額

最低弁済額とは、実務上見られる事案に限定すると、
①再生債権が500万円以下➡弁済額は一律100万円
②再生債権が500万円を超え1500万円以下➡弁済額は再生債権の5分の1
③再生債権が1500万円を超え3000万円以下➡弁済額は一律300万円
になります。

上記は一見すると分かりにくいので、最低弁済額が清算価値を下回る前提で具体例で説明をしますと、再生債権が500万以下であれば、200万円でも、300万円でも、400万円でも、弁済額は一律100万円に減ります。
この場合、原則として100万円を3年間(36か月)で返済していくことになりますので、1か月あたり2万7778円を返済すれば足りることになります。
他方で、再生債権が800万円であれば160万円、1200万円であれば240万円を返済することになります。

(3)清算価値

清算価値の算出に際しては、原則として申立時点の預貯金や保険解約返戻金などの財産の額を全額算入することになります。
なお、個人再生手続では、破産手続と異なり、否認権に関する規定は適用されません。そのため、申立人が受任通知後に一部の債権者へ弁済した場合、その偏頗弁済分を清算価値に上乗せする必要があります。

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✔偏頗弁済分の清算価値上乗せについての解説記事はこちら▶コラム:公務員の個人再生手続における給与天引額と清算価値

2 履行可能性の審査

裁判所は、「再生計画が遂行される見込みがない」こと(民事再生法174条2項2号)、つまり履行可能性があるかも審査することになります。

裁判所は、履行可能性の審査に際し、少なくとも開始決定後から毎月継続して積立てができているかを確認することになります。
積立てを怠ったり、途中で積立金を出金した場合、再生計画案が認可されないことがありますので、注意が必要です。

3 審査後

以上の審査を経て問題なければ、裁判所は、付議決定を出し、各債権者に対し再生計画案を発送することになります。

Ⅺ 認可決定

1 認可要件

債権者の数として半分以上が反対した場合、あるいは債権額ベースで半分を超える人が反対した場合、再生計画案は否決されますが(民事再生法230条6項)、そうでない限り、再生計画案は認可されることになります。

2 不同意意見が見込まれる場合

実務上、再生計画案に不同意意見を出す債権者はほとんどいません。もっとも、過去に、債権額の過半数を占めていた楽天カードや信用保証協会が不同意意見を出したことありました。その場合、小規模個人再生手続は廃止とならざるを得ません(民事再生法191条、237条)。

そこで、大口債権者がいる場合、申立前に再生計画案に同意する見込みがあるかを事前に確認し、不同意の可能性がある場合は初めから給与所得者等再生の申立てをすることになります。

Ⅻ 計画案に基づく返済

裁判所は、再生計画案の認可決定を出した後、その旨を官報に載せることになります。そのため、認可決定が出てから確定するまでに約1か月かかることになります。
再生計画案では、初回返済月を「確定月の翌月」としていた場合、認可決定が8月、その確定が9月とすれば、初回返済は10月~となります。

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