1 はじめに
破産者が不動産を所有している状態で破産した場合、当該不動産は破産管財人に管理処分権が帰属します(破産法78条1項)。管財人は、まず、不動産の任意売却を試みます(同2項1号)。しかし、買受希望者が現れなかったり、担保権者の同意が得られない場合、破産財団から放棄する(同項12号)。財団債権から放棄されると、当該不動産は、破産管財人の管理下から離れることになります。その後の不動産の帰属はどうなるのでしょうか。また、当該不動産に抵当権が設定されている場合、その抵当権はどうなるのでしょうか。
2 破産者が個人の場合
破産者が個人の場合、破産財団から放棄された不動産は、破産者の自由財産として、破産者に管理処分権が復帰します(最高裁平成12年4月28日)。破産者が個人の場合、免責されても、債務は消滅せず自然債務として残存します。破産法による免責を受けた債権というのは時効によって消滅せず、抵当権そのものの消滅時効(民法166条2項)が成立しない限り消滅しないと解されています。つまり、抵当権設定登記の放棄に、金融機関が応じない限り、抵当権は消滅せず、登記の抹消はできません。
3 破産者が法人の場合
法人が破産する場合、破産手続開始決定時に解散しますが(会社法第471条5号)、その法人格は、破産手続開始後も、破産の目的の範囲内で存続するとみなされます(破産法35条)。
ところで、破産管財人が、当該不動産を破産財団から放棄した場合、法人の場合も個人のそれと同様に、破産者に管理処分権が復帰します。もっとも、個人の場合とは異なり、法人には免責制度はありません。上記のとおり、破産開始決定によっても、会社の法人格が失われるわけではないので、不動産は当該法人に帰属したままの状態となります。そして、被担保債権及び抵当権についても、消滅せず存続し続けます。
もっとも、法人破産の場合は、取締役が当然には清算人に選任されません(最判平成16年10月1日)。そのため、破産した法人の法人格は残り、放棄された不動産の管理処分権も帰属するが、清算人や特別代理人がいない限り、具体的に当該財産の管理処分権を執行する者はいないということになります。