1 はじめに
夫婦が離婚に際して養育費の支払いについて合意書を交わしたものの、離婚後に非親権者が合意書に基づき養育費の支払いをしなかったとします。そこで、親権者が非親権者に対して合意に基づき未払いの養育費の支払いを求める裁判手続を行う場合、家庭裁判所に家事審判を申し立てるべきか、それとも地方裁判所に民事訴訟を提起するべきかが問題となります。
2 東京高決令和5年5月25日
妻が、離婚に際して前夫との間で交わした離婚協議書に定めのある養育費支払いの合意に基づき、前夫に対して未払いの養育費の支払いを求めて家事調停を申し立てました。この調停は不調となり審判へ移行しましたが、原審は、前夫が前妻に対して未払分の養育費の支払いを命じる審判を出しました。
これに対して高裁は、家庭裁判所ではなく地方裁判所に対し民事訴訟を提起するべきであるとして申立てを却下しました。
「・・当事者間には、抗告人が相手方に対し、子らの養育費として、令和3年1月6日から子らがそれぞれ高校を卒業する3月まで、子1人につき月額3万円を支払う旨の本件合意が存在するものと認められるところ、相手方が、本件合意に基づき、抗告人に対し、子らの養育費を支払うよう命じることを求める場合には、地方裁判所に対し、抗告人を被告とする訴えの提起をし、判決を求める民事訴訟手続によるべきであって、これを家庭裁判所に対して求めることはできない。」
「・・ したがって、相手方が、家庭裁判所に対し、抗告人に子らの養育費を支払うよう命じることを求める本件申立ては、いずれも不適法であって、却下を免れない。」
3 最後に
上記東京高決の判断は通説的な見解に沿った判断となります。非親権者が合意に基づき養育費を支払わない場合、親権者は裁判手続を経て債務名義を取得することが考えられますが、この場合は家庭裁判所ではなく地方裁判所に民事訴訟を提起することになります。
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