親権者が単独である未成年者について、当該親権者が死亡した場合、「未成年者に対して親権を行う者がないとき」(民法838条1号)に該当し、未成年後見が開始するのが原則です。
では、(未成年後見人の他に)親権者となり得る人がいるとき、その人を親権者とすることができるのでしょうか。
1 実親が死亡した場合
父母の離婚により、一方が単独親権者となった後、当該単独親権者が死亡したとき、他方を親権者とすることができるでしょうか。
この点、諸説ありますが、裁判所では親権無制限回復説(後見人の選任の前後を問わず、生存親に親権者を変更できるとする説)が定着しています。
民法838条1号の文言に従えば、単独親権者の死亡により後見人が選任されるということになりますし、親権者の変更に関する民法818条6項は、親権者の死亡時のことを定めていません。
しかし、実親は後見人ではなく、親権者という方が自然ですし、後見人選任という不安定な状況を回避するためにも、親権無制限回復説が実体に即しています。
2 養親が死亡した場合
単独親権者である養親が死亡した場合、実親と異なり、子が養子であるため、死後に離縁をしない限り法律上の縁組が解消されず、実親の親権を回復して良いかという問題になります。
裁判所は、養親死亡の場合について統一的な見解は示していません。通説は、養父母の双方が死亡しても養子縁組の効力は解消しないから、実親の親権は回復しないという説で、親権無制限回復説とは異なる立場です。
これは死後離縁という制度の存在から、養親死亡後に当然に親権が復活するという立場は取り得ないからです。