1 租税債権とは
租税債権、すなわち租税等の請求権とは、国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権のことを言います(破産法97条4号)。
以下、租税債権について、破産手続開始前の原因に基づくもの、破産手続開始後の原因に基づくものとに分けて、説明していきます。
2 破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税債権
1 原則
優先的破産債権とは、「破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権」になります(破産法98条1項)。
国税徴収法8条によれば、「国税は、納税者の総財産について、・・・すべての公課その他の債権に先だつて徴収する。」となっています。
したがって、破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税債権は、原則として、優先的破産債権となります。
2 例外
破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税債権のうち、「・・・破産手続開始当時、まだ納期限の到来していないもの又は納期限から一年・・・を経過していないもの」は財団債権となります(破産法148条1項3号)。
財団債権とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権のことをいいます(破産法2条7号)。そして、財団債権は破産債権に先立って破産管財人により弁済されることになります(破産法151条)。
3 具体例
消費税の滞納が令和4年分(具体的納期限が令和5年3月31日)、令和5年分(具体的納期限が令和5年8月31日)とあり、破産手続開始決定が令和6年7月7日になされた事例で考えます。
まず、令和5年分は具体的納期限から1年を経過していないので財団債権となります。他方、令和4年分は具体的納期限から1年を経過しているので、財団債権ではなく、優先的破産債権となります。
3 破産手続開始後の原因に基づいて生じた租税債権
1 原則
破産手続開始後の原因に基づいて生じた租税債権は、破産債権となります(破産法97条4号)。そして、他の破産債権に劣後することになります(破産法99条1号)。
2 例外
破産手続開始後の原因に基づいて生じた租税債権のうち「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権」に該当するものは、財団債権となります(破産法148条1項2号)。そして、破産管財人は、これについては「他の財団債権に先立って、弁済する」ことになります(破産法152条2項)。
3 具体例
破産手続開始決定が令和6年7月7日の場合、令和7年に発生した固定資産税は財団債権となります。
4 最後に
以上、租税債権の破産手続上の取り扱いについて説明しました。破産手続一般についての詳しい説明は関連記事をご参照ください。
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