1 はじめに
破産者は破産手続開始決定後に亡くなった場合、破産者の相続人は続行された破産手続において免責を申し立てることができるかが争われた高松高決平成8年5月15日を紹介します。
2 事案の概要
破産者は、平成7年3月2日午前10時に破産開始決定を受けた後、同年4月1日に亡くなった。その後、破産者相続財産につき破産手続が続行され、同年9月19日、破産廃止の決定がなされた。
破産者の子らは免責を申し立てたところ、一審は「免責申立権が一身専属権であるとして、相続人に免責申立権はない」として免責申立てを却下した。
そこで、破産者らの子は「相続人は、被相続人の地位を包括的に承継するものであるから被相続人の破産者たる地位を承継するものとして、破産者が、免責申立前に死亡した場合には、その免責申立権者たる地位も継承すると解すべきである。」などと述べ抗告した。
3 裁判所の判断
「破産宣告後に破産者が死亡した場合には、その相続財産(ただし、破産宣告後の新得財産を除く。)につき破産手続が続行されることになるところ、破産者の相続人は、破産法三三条に則り、破産者に対して有する債権につき相続債権者と同一の権利を有する者として、破産債権者たり得ることに照らすと、破産者の相続人を右破産手続の承継人とみることはできず、相続財産自体を右破産手続の当事者(破産者)とみ、法人格なき財団に破産能力を認めるのを相当とする。してみれば、破産者の相続人が右破産手続の当事者であったことを前提に、免責の申立てをする余地はないというほかはない(ちなみに、破産者の相続人は、限定承認や相続放棄をすることにより、相続債権者が相続人の固有財産に対して権利を行使するのを阻止すべきである。)。」
この判断を前提にすれば、破産者の相続人は、熟慮期間内に相続放棄などをしなければいけないことになります。
4 最後に
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