1 はじめに
推定相続人は公正証書遺言作成の際に事実上立ち会うことができるかが争われた高知地判平成7年8月21日を紹介します。
2 高知地判平成7年8月21日
1 事案の概要
Xらは、亡Aの長男、長女及び三男であり、Yは二男になります。Aは、生前、全ての財産をYに相続させる旨の公正証書遺言を作成していました。
ところで、公正証書作成の際、推定相続人であるYは、公証人役場の入口近くにある長椅子に座って、Aが本件遺言を行う様子を眺めていました。それだけでなく、Yは、遺言内容の口授に先立つ公証人とAとの問答の際、Aから土地の正式名を尋ねられて、これを教えていました。
ところで、推定相続人は遺言の証人又は立会人となることができない、とされています(民法974条2号)。「立会人」にYのように事実上立ち会った者も含まれるとするとするならば、遺言は方式違反により無効となります。Xらは、この点をも指摘の上で、遺言無効確認訴訟を提起しました。
2 裁判所の判断
裁判所は、立法経緯などを踏まえ、民法974条2号は事実上の立会人についてまで適用されることを予定していない、と判断しました。