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コラム:特別受益の評価基準時

2024.04.08
1 はじめに

贈与時から相続開始時(遺産分割時)までの間に贈与の目的物の価値が変動している場合、どの時点を基準に特別受益(民法903条1項)の額を算定するかが問題となります。以下、最判昭和51年3月18日をご紹介します。

 

2 最判昭和51年3月18日
1 一審・原審の判断

一審・原審は、遺留分の算定にあたり、次のとおり、生前(大正12年ないし同15年当時)贈与され費消した金員を相続開始時(昭和33年1月7日)の物価指数に基づいて250倍に換算評価するべきとしました。

「・・・原告が鶴太郎から贈与を受けた大正一二年ないし一五年当時と相続開始時とでは物価指数において後者が前者の少くとも二五〇倍以上であることは公知の事実であるから、以上のような考え方に拠って本件遺留分算定の基礎となる財産の価額を算出すると、・・・現金については原告の受けた贈寿金四一二五円を相続開始時たる昭和三三年一月当時の貨幣価値に換算するのに、物価指数の比率を一対二五〇とみて一○三万一二五○円となる。」

 

2 最高裁

次のような理由により原審の判断が妥当であると判断しました。
「被相続人が相続人に対しその生計の資本として贈与した財産の価額をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産に加える場合(注:現行民法1044条3項)に、右贈与財産が金銭であるときは、その贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもつて評価すべきものと解するのが、相当である。けだし、このように解しなければ、遺留分の算定にあたり、相続分の前渡としての意義を有する特別受益の価額を相続財産の価額に加算することにより、共同相続人相互の衡平を維持することを目的とする特別受益持戻の制度の趣旨を没却することとなるばかりでなく、かつ、右のように解しても、取引における一般的な支払手段としての金銭の性質、機能を損う結果をもたらすものではないからである。」

 

3 最後に

以上、特別受益の評価基準時について説明しました。特別受益について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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