1 はじめに
遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受けた受遺者等が寄与分を主張することができるかについて、問題となった東京高判平成3年7月30日を紹介します。
2 東京高判平成3年7月30日
1 事案
被相続人は、本件不動産を含む財産全部を包括して相続人甲に遺贈しました。
他の相続人から遺留分減殺請求を受けた甲は、次のとおり、相続財産である本件不動産につき60%の寄与分があるので具体的遺留分の計算において考慮すべき旨主張しました。
「被相続人の子のうち男は甲だけであったので、甲は幼少時から継続して被相続人の稼業を手伝った。これにより、その財産の大部分を占める農地を手放すことを免れたものである。甲に対する本件遺贈のうち少なくとも60%は甲の右寄与に報いる趣旨でなしたものであり、この部分については遺留分減殺請求権を行使することができない。」
2 判旨
裁判所は、以下のとおり、遺留分侵害額の算定において寄与分を考慮することは認められないとしました。
「寄与分は、共同相続人間の協議により、協議が調わないとき又は協議をすることができないときは家庭裁判所の審判により定められるものであり、遺留分減殺請求訴訟において、抗弁として主張することは許されないと解するのが相当である。」
3 現行法
民法1046条2項は遺留分侵害額の計算について規定していますが、同項2号では、遺留分からの控除分について、「第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額」と定めています。ここでは、寄与分の規定(民法904条の2)は省かれています。
このように、現行法では、寄与分は、特別受益と異なり、遺留分侵害額の算定に際して考慮されないことになっています。
4 最後に
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