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コラム:債権者一覧表に漏れがあった場合と免責決定

2024.02.18
1 はじめに

債務者が、破産手続申立てをして、免責決定が確定した場合、「・・破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。」とされています(破産法253条1項本文)。もっとも、「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」については免責されないことになります(同条同項6号)。

そこで、以下では、「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった」か否かが問題となった東京地判平成15年6月24日を説明していきます。

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2 東京地判平成15年6月24日
 1 事実関係

甲は、平成11年1月28日、乙との間で本件連帯保証契約を締結しました。甲は、丙から迷惑を掛けないなどと告げられた上、丙の事業が成功している旨聞いていました。

甲は、平成12年当時、持病悪化のため勤務先を退職したため、住宅ローンの返済に窮し、妻とも離婚するに至るなど、著しい苦境に陥っていました。

甲は、契約を締結してから約1年8か月が経過した平成12年9月6日、破産申立てをしました。この時、本件債権者名簿には本件連帯保証契約に基づく債務は記載されていませんでした。

本件債権者名簿に記載された4社に対する合計約2500万円弱の債務のうち、そのほとんどは住宅ローンに係る債務であり、その余の少額の債務は上記破産申立ての直前ころの生活費等に係る債務でした。

本件免責決定が確定するまでの間、甲は、乙から本件保証債務の履行を求められたことや丙から何らかの連絡を受けたことがありませんでした。

 

2 一般論

裁判所は、債権者名簿に記載しなかったことについて過失が認められないときは免責されることになる、と判示しました。

「破産法三六六条の一二第五号は、破産者が「知リテ」債権者名簿に記載しなかった請求権を非免責債権とする旨規定しているが、この趣旨は、債権者名簿に記載されなかった債権者は、破産手続の開始を知らなかった場合、免責に対する異議申立ての機会を失うことになるから、債権者名簿に記載されなかった債権を非免責債権とし、このような債権者を保護しようとしたものである。他方、破産免責の制度が、不誠実でない破産者の更生を目的とするものであることからすれば、債権者名簿に記載されなかったことが破産者の責めに帰することのできない事由による場合にまで非免責債権とすることも相当ではない。そうすると、債権者名簿に記載されなかった債権について、債権の成立については了知していた破産者が、債権者名簿作成時に債権の存在を認識しながらこれに記載しなかった場合には免責されないことは当然であるが、債権者名簿作成時には債権の存在を失念したことにより記載しなかった場合、それについて過失の認められるときには免責されない一方、それについて過失の認められないときには免責されると解するのが相当である。」

 

3 あてはめ

裁判所は、本件事実関係の下では、甲に過失は認められないとしました。

「控訴人が免責申立ての際に本件債権者名簿に本件保証債務を記載するのを失念したとしても不自然ではないというべきであり、したがって、それについて控訴人に過失があったとは認めるには足りないものである。」

 

3 最後に

以上、債権者一覧表に漏れがあった場合と免責決定についてご説明しました。自己破産については関連記事もご参照ください。

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