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コラム:支払督促と既判力

2024.02.18
1 はじめに

民事訴訟法396条によれば、「仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する。」と定められています。

また、民事訴訟法114条1項によれば、「確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。」と定められています。

以上の条文を合わせて考えれば、支払督促には既判力が認められることになりそうです。そこで、以下では、支払督促の既判力について説明していきます。

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2 支払督促に既判力はない

判決は、当事者の主張立証がなされた上で言い渡されるものなので、手続保障があることが前提です。他方で、支払督促の場合、「債務者を審尋しないで発する。」(民事訴訟法386条1項)とあるとおり、相手方の主張立証が制度上予定されていないので、判決と同じ手続保障がありません。そのため、支払督促には既判力がないと解されています。

この点について、宮崎地判令和2年10月21日は、「本件仮執行宣言付支払督促は、これが確定した後でも既判力がない以上、この確定前に完成した本件貸金債権の消滅時効を援用することにより、本件貸金債権が確定的に消滅することとなる」と判示し、支払督促は判決と異なり既判力がないとしています。

したがって、債務者は、債権者から時効期間経過後に支払督促が申し立てられて権利が確定したとしても、なお消滅時効の援用の意思表示ができます。

なお、時効期間が経過する前に支払督促が申し立てられ権利が確定した場合、10年が経過しなければ時効は完成しません(民法169条1項)。

※参考:民法169条1項
「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。」

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