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コラム:公正証書遺言と口授の程度について

2023.11.23
1 はじめに

公正証書遺言を作成する場合、①証人二人以上の立会いがあること、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること、③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること、④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと、⑤公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すことが必要です(民法969条)

②「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授」は、遺言者の真意を確保するためのものとなります。そのため、口授したといえるためには、遺言者が遺言内容の全てにわたって逐一完全に述べることまでは要求されていませんが、遺言の内容を財産及び受遺者の特定が可能な程度に述べることが必要です。

以下では、「口授」がなかったとされ、遺言が無効となった裁判例(大阪高裁平成26年11月28日判決)を紹介します。

 

2 事案と判旨
1 事案

遺言者Aは、多発性脳梗塞等の既往症があり、認知症と診断されたこともあり、記憶力や特に計算能力の低下が目立ち始めていました。
遺言内容は、評価額合計が数億円にも及ぶ多額かつ多数で、多様なAの保有資産を推定相続人全員に分けて相続させることを主な内容とするものでした。
遺言当日、公証人は「あらかじめ作成していた遺言公正証書の案を、病室で横になっていたAの顔前にかざすようにして見せながら、項目ごとにその要旨を説明し、それでよいかどうかの確認を求めたのに対し、Aは、うなずいたり、「はい」と返事をしたのみで、遺言の内容に関することは一言も発していない。」という事実が明らかとなりました。

2 判旨

裁判所は「公証人の説明に対して「はい」と返事をしたとしても、それが遺言の内容を理解し、そのとおりの遺言をする趣旨の発言であるかどうかは疑問の残るところであり・・・、この程度の発言でもって、遺言者の真意の確保のために必要とされる「口授」があったということはできない。」としました。

 

3 最後に

以上、公正証書遺言と口授の程度について説明しました。遺言の一般的なことについては、関連記事をご確認ください。

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