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コラム:個人事業主の個人再生と買掛金支払い

2024.02.12
1 はじめに

個人再生申立て(一般的なことは関連記事をご参照ください)を検討中の個人事業者は、買掛金だけでなく、銀行、サラ金などの借入金があることが多いです。

このような個人事業主としては、買掛金の支払いを継続しなければ事業を継続することができなくなる可能性があります。そのため、買掛金以外の債権者には受任通知を発送して支払いを停止する一方で、買掛先には引き続き買掛債務を支払い事業を継続する必要が出てきます。
このような手法の手続上の問題点について説明していきます。

【関連記事】

✔個人再生について一般的な解説記事はこちら▶個人再生

 

2 申立後に発生する買掛金の支払い
1 はじめに

まず、申立後に発生する買掛債務の支払いについては、民事再生法により認められています。以下、フェーズごとに説明していきます。

 

2 申立後、開始決定までに発生した買掛債務

申立人は、裁判所から共益債権とする旨の許可を得て、弁済することになります(民事再生法120条1項1号)。

参考:民事再生法120条1項
「再生債務者・・・が、再生手続開始の申立て後再生手続開始前に、資金の借入れ、原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことができない行為をする場合には、裁判所は、その行為によって生ずべき相手方の請求権を共益債権とする旨の許可をすることができる。」

 

3 開始決定後に発生した買掛債務

申立人は、随時(裁判所の許可なく)、弁済することができます(民事再生法119条2号)。

参考:民事再生法119条2号
再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権」は「共益債権とする」

 

3 申立前に発生する買掛金の支払い
1 前提

受任通知後、申立前に発生する買掛金を弁済することは、偏頗弁済否認に該当することになります(破産法162条1項1号イ、162条3項)

 

2 申立て棄却の可能性

そのため、「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき」に該当し、再生手続開始の申立てが棄却される可能性があります(民事再生法25条4号)。

 

3 清算価値に上乗せ

個人再生は通常再生と異なり否認制度がないので、偏頗弁済分が清算価値に上乗せされることになります。

偏頗弁済分を清算価値に上乗せする場合、申立前に支払った買掛金全額を清算価値に上乗せするのか、そこまではせず、例えば申立前1ヶ月分に相当する買掛金を上乗せするのかが問題となります。

例えば、受任通知から申立てまでの間に半年以上かかった場合、買掛金全額を清算価値に上乗せするとなれば、清算価値が高額になるおそれがあります。過去に扱った事例では、個人再生委員が就くことになり、最終的には、申立前1か月分に相当する買掛金を清算価値に上乗せすることになりました。

 

4 まとめ

受任通知後、申立前に発生する買掛金債務を支払うとなれば、申立てが棄却されるリスク、偏頗弁済分が清算価値に上乗せされ弁済額が増額するリスクがあります。そうであれば、個人事業主が個人再生をする場合、掛け取引(買掛債務が発生する取引)は止めて、現金取引をするのが無難ということになりそうです。

最後に、個人再生手続一般については、関連記事をご参照ください。

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✔個人再生手続の流れについての解説記事はこちら▶コラム:小規模個人再生手続の流れ

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