1 はじめに
遺産分割手続において、遺産の範囲に争いが生じた場合、相続人は、他の相続人を被告として遺産確認訴訟を提起することになります。以下では、遺産確認訴訟について、説明していきます。
2 遺産確認訴訟とは
「当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴え」(最判昭和61年3月13日)を意味します。
3 実例
例えば、もと亡A名義の不動産が相続人Bに相続登記されていたとします。そこで、他の相続人Cらが、Bを被告として、①相続登記の原因である遺言は遺言能力のない状態で作成されたものなので無効である、あるいは②相続登記の原因である(一部)遺産分割協議は錯誤取消しにより無効であると主張し、当該不動産が亡Aの遺産に属することの確認を求める訴えを提起する場合が想定されます。
4 遺産確認訴訟の適法性
1 最判昭和61年3月13日の事案
亡Aの共同相続人であるXらおよびYらの間で、もとAの所有であったことに争いのない不動産について、Aから第三者(Yら側)に登記名義が移転されていることから、遺産分割の前提問題として、それがAの遺産に属するか否かが争われました。
Yらが遺産帰属性を否定したため、Xらが、本件不動産はAの遺産にすることを確認するという内容の訴えを提起しました。
2 裁判所
「・・原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもつて確定し、したがつて、これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、もつて、原告の前記意思によりかなつた紛争の解決を図ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである。」とし、確認の利益が認められるので訴え却下とならない、と判断しました。
5 遺産分割調停との関係
遺産分割調停において、遺産の範囲が争われる場合もあります。この場合、調停の中で遺産の範囲について中間合意した上で、引き続き手続を進めることもできます。もっとも、中間合意に既判力はないので、後から遺産帰属性が争われる可能性もあります。そのような見込みがあるのであれば、大変ではありますが、遺産確認訴訟を提起するべきでしょう。
6 最後に
遺産分割について一般的なことは関連記事をご参照ください。
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