1 はじめに
個人再生の場合、再生計画案に基づく弁済額は、最低弁済額と清算価値のいずれか高いほうになります(個人再生手続の一般的なことは関連記事をご参照下さい)。
今回は、清算価値をいつの時点で算出するのかについて説明していきます。
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2 なぜ問題となるのか
清算価値の基準時について、民事再生法は明文を設けていませんが、民事再生法236条等からして、再生計画の認可決定時と解されています。
もっとも、清算価値の基準時=認可決定時を形式的に適用するとなれば、預貯金の額、退職金の額、生命保険の解約返戻金の額などすべての財産について、申立後~認可決定時までの増減を、清算価値の算出にあたり反映させなければなりません。
しかし、個人再生手続が個人債務者の簡易迅速な再生を図る手続であるところ、このよう運用は煩雑であり、適切ではありません。そこで、実務では、特段の事情がない限り、申立時点の清算価値が認可時も継続しているとみなす、いう運用となっています。
そこで、以下では、開始決定後・再生計画案提出までの間、財産が増えた場合、減った場合というイレギュラーな事案について簡単に説明していきます。
3 開始決定後に財産が減った場合
例えば、申立時の財産が200万円だったとして、再生計画案提出時までに高額の医療費を負担したなどの理由により100万円に減少した場合を考えます。この場合、有用な資に充てられたことを理由に、清算価値を100万円と算定して問題ないと思われます。
4 開始決定後の財産が増えた場合
申立時の残ローンが2000万円、不動産の評価額が2000万円の場合、申立時の清算価値は0円となります。ところが、再生債務者が開始決定後に弁済許可に基づき再生計画案提出時までに40万円弁済した場合、残ローンは1960万円になります。そのため、評価額2000万円-残ローン1960万円=40万円となり、清算価値は40万円となりそうです。
もっとも、不動産の評価額を再査定し、査定額が2000万円以下となれば、清算価値は40万円以下となります。
5 最後に
以上、個人再生と開始決定後の財産増減について説明しました。個人再生手続の流れについては、関連記事をご参照ください。
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