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コラム:具体的相続分による遺産分割の時的限界

2023.11.26
1 はじめに

遺産分割協議(調停)では、法定相続分又は指定相続分に基づき遺産を分割することになりますが、寄与分や特別受益がある場合は具体的相続分に基づき遺産を分割することになります。従前、遺産分割に期間制限の定めはなかったので、被相続人が亡くなってから10年以上経過した後も、寄与分や特別受益を争点とする遺産分割協議をすることができました。しかし、令和3年4月28日公布、同5年4月1日から施行された改正法により、相続人は、被相続人が亡くなってから10年経過した場合、遺産分割協議(調停)において、寄与分や特別受益を主張することができなくなりました。以下、期間制限の具体的内容についてご説明します。

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2 制度趣旨と内容

被相続人が亡くなってから長期間経過した場合、特別受益や寄与分について、時の経過によりそれらの証拠資料の散逸することになるため、立証が困難になります。
また、相続開始から長期間経過した場合、相続人は、他の相続人が寄与分や特別受益の主張を断念したと期待しているともいえ、この期待は保護されるべきとも考えられます。

そこで、改正法では、原則として、相続開始から10年経過した遺産分割は、法定相続分又は指定相続分によることになりました(民法904条の3)。
ただし、例外として、
①10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割の調停又は審判の請求をしたとき
②相続開始時から10年経過する前の6か月以内の間に「やむを得ない事由」が共同相続人にあり、その事由が消滅してから6か月以内に相続人が家庭裁判所に遺産分割の調停又は審判の請求をしたとき
に限って、相続人は、10年を経過した場合でも寄与分や特別受益の主張をすることができます。

 

3 改正の効果

以上、相続人は、相続開始から10年を経過すれば、具体的相続分による分割の利益を失う(寄与分や特別受益の主張を制限される)ことになりますので、具体的相続分での遺産分割を希望する相続人は、早期の遺産分割をしなければいけないことになります。

また、法改正により、期間経過後の遺産分割は、法定相続分又は指定相続分に基づいて遺産分割がなされることになるので、考慮要素(論点)が少なるため、協議(調停)が円滑に進むことになります。

 

4 最後に

遺産分割について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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