1 はじめに
夫が住宅ローンを組んで一軒家を購入し、妻がその連帯保証人になったとします。そして、妻は、サラ金や銀行ローンから多額の借入れをしており、個人再生を行うことになったとします。
このようなケースにおいて、夫は住宅ローンを約定どおり弁済していた場合、妻の個人再生の手続において、住宅ローンの連帯保証債務はどのように取り扱われるのでしょうか。
2 再生債権として扱われる
住宅ローンの連帯保証債権は、再生債権に変わりありませんので、申立時、債権者一覧表に載せなければいけません。
一般に住宅ローンは数千万円単位となることが多いので、連帯保証債務も数千万円にのぼることが往々にあります。個人再生の場合、再生債権の総額が5000万円を超えないことという要件がありますので、この要件に抵触しないか注意しなければいけません。
なお、住宅ローンの契約書には、期限の利益喪失の一事情として、連帯保証人が個人再生の申立てをしたこと、と記載してあることがあります。これを文字どおり適用すれば、期限の利益喪失、一括弁済と言う流れになってしまいますが、実際上、銀行側はそのような紋切り型の対応はしない可能性が高いと思われます。
3 再生計画案と弁済留保条項
主債務者が約定どおり住宅ローンを払っている限り、住宅ローン債権者にとってはなんら不利益はありません。また、連帯保証人が再生計画案に基づき保証債務を弁済することにより、かえって煩雑になり、住宅ローン債権者に不都合が生じることになります。
そこで、再生債務者側としては、再生計画案作成時、主債務者が支払いを続ける限り、連帯保証債務分について再生計画案に従った弁済を留保するという、いわゆる弁済留保条項を設けることが考えられます。この場合、再生債務者は、住宅ローン債権者が弁済留保条項を設けることに同意したことを証する書面を裁判所へ提出することになります。
4 再生計画遂行時の注意点
再生計画案に弁済留保条項を設けた場合、再生債務者は、認可決定確定後、連帯保証債務以外の債務について再生計画に基づき弁済していくことになります。
主債務者が約定どおり住宅ローンを支払っていけば以上のとおりでなんら問題ありませんが、もし何らかの事情により主債務者が住宅ローンの支払いが出来なくなった場合、住宅ローン債権者は、再生債務者に対し、期限が到来している再生計画上の分割弁済額を一括で支払うよう求めることができ、かつ、未到来分についても再生計画どおり支払いを求めることができます。
このように、再生債務者としては、再生計画遂行途中で、主債務者が住宅ローン未払い状態となった場合に留保していた連帯保証債務の支払いが現実化する恐れがあるため、このような最悪の事態に備えて相応の積立てをしていくことが望ましいといえます。
