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コラム:療養看護の寄与分

2023.11.26
1 はじめに

相続人の一人が両親と同居し療養看護を長年してきた場合、その相続人には、被相続人の財産の維持増加に貢献したとして、遺産分割において寄与分(民法904条の2)が認められることがあります。これは療養看護型の寄与分と言われています。

療養看護型の寄与分は、以下の6つの要件をすべて満たす必要があります。
①療養看護の必要性
②特別の寄与
③無償性
④継続性
⑤専従性
⑥財産の維持又は増加との因果関係
以下では、それぞれの要件について簡単に説明していきます。

 

2 各要件の説明
1 療養看護の必要性

一般的に被相続人が要介護2以上であることが必要とされています。

 

2 特別の寄与

特別の寄与とは、抽象的には、通常の扶養義務の範囲を超える貢献をしたことを意味します。したがって、被相続人と同居し家事を分担していただけでは特別の寄与とは認められません。

また、配偶者の場合、特別の寄与はまず認められません。というのも、夫婦間の協力扶助義務がある上(民法752条)、寄与分は法定相続分で考慮されていると評価できる(妻は2分の1以上)からです。

 

3 無償性

相続人が、被相続人から、お小遣い、交通費として定期的に金銭を貰っていた場合、無償の貢献とは認められない場合があります。

また、相続人が被相続人の住居で同居し、かつ被相続人の資産や収入で生活していた場合、有償の貢献と評価できるため、無償性の要件を満たさない可能性があります。

 

4 継続性

一般的に、相続人が被相続人を1年以上継続して在宅で看護したことが必要とされています。
なお、通算して1年以上であれば継続性が認められます。例えば、在宅介護が半年で、その後、病院で3か月、施設で3か月、再び在宅介護が半年の場合も継続性の要件が認められます。

 

5 専従性

専従性の要件については、専業や専念ということまでは不要とされています。
では、相続人が平日フルタイムで働き、その間は職業看護人に被相続人を看護してもらい、夕方以降、看護していたケースはどうでしょうか。判断が難しいところですが、専従性が認められないとする見解が多数と思われます。

 

6 財産の維持又は増加との因果関係

相続人が療養看護をしたことにより職業看護人に支払うべき費用の支出を免れたことを意味します。

 

3 寄与分の計算方法

療養看護型の寄与分額は、①報酬相当額×②介護日数×③裁量割合で計算することが一般的です。以下では各要素について説明していきます。

1 報酬相当額

介護報酬基準をもとに算出することになります。

 

2 介護日数

実際に介護した日数になります。
したがって、入院期間、施設入所期間、在宅又は通所の介護サービス利用期間は介護日数に含まれません。

 

3 裁量割合

50~80%とされています。というのも、相続人は職業看護人ではないこと、もともと扶養義務を負っていることからして、介護報酬基準よりも減額するべきだからです。

【関連記事】

✔療養看護型の寄与分の計算方法についての裁判例の解説記事はこちら▶コラム:療養看護型の寄与分の裁判例

 

4 最後に

以上、療養看護と寄与分について説明しました。寄与分について一般的なことは関連記事をご参照ください。

【関連記事】

✔寄与分一般についての解説記事はこちら▶その他の問題(寄与分・特別受益)

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