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コラム:年金分割の裁判例

2024.01.07
1 はじめに

原審が年金分割の按分割合を0.35と定める旨の審判をしたのに対し、抗告人がこれを不服として即時抗告をしたところ、抗告審が0.5とした大阪高裁令和元年8月21日決定を紹介します。

 

2 按分割合の基本枠組

大阪高裁平成21年9月4日決定は、年金分割の按分割合は例外的な事情がない限り0.5であり、長期間別居していることは例外的事情に該当しないという判断枠組みを示しました。以後、他の審判でもこの判断枠組みを踏襲しているとされています。

「年金分割は、被用者年金が夫婦双方の老後等のための所得保障としての社会保障的機能を有する制度であるから、対象期間中の保険料納付に対する寄与の程度は、特別の事情がない限り、互いに同等とみて、年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当であるところ、その趣旨は、夫婦の一方が被扶養配偶者である場合についての厚生年金保険法78条の13(いわゆる3号分割)に現れているのであって、そうでない場合であっても、基本的には変わるものではないと解すべきである。
そして、上記特別の事情については、保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情がある場合に限られるのであって、抗告人が宗教活動に熱心であった、あるいは、長期間別居しているからといって、上記の特別の事情に当たるとは認められない。

 

3 大阪高裁令和元年8月21日決定

原審は、2の判断枠組みを前提に、婚姻期間が44年に対し同居期間が約9年と婚姻期間に比べて同居期間が極端に短いことをもって特別の事情ありとしたうえで、妻への按分割合を50%から35%に減じました。
しかし、抗告審は、以下のとおり特別の事情ありとはしませんでした。

「そこで、上記特別の事情の有無について検討すると、前記認定のとおり、抗告人と相手方の婚姻期間44年間中、同居期間は9年間程度にすぎないものの、夫婦は互いに扶助義務を負っているのであり(民法752条)、このことは、夫婦が別居した場合においても基本的に異なるものではなく、老後のための所得保障についても、夫婦の一方又は双方の収入によって、同等に形成されるべきものである。この点に、一件記録によっても、抗告人と相手方が別居するに至ったことや別居期間が長期間に及んだことについて、抗告人に主たる責任があるとまでは認められないことなどを併せ考慮すれば、別居期間が上記のとおり長期間に及んでいることをしん酌しても、上記特別の事情があるということはできない
そうすると、対象期間中の保険料納付に対する抗告人と相手方の寄与の程度は、同等とみるべきであるから、本件按分割合を0.5と定めることとする。」

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