1 はじめに
特定少年による不同意性行等保護事件について、千葉家裁令和7年1月24日の事案(家庭の法と裁判59号。以下「裁判例」といいます。)をもとに説明していきます。
2 原則検察官送致
不同意性行等罪は、「五年以上の有期拘禁刑に処する。」とされています(刑法177条)。よって、特定少年が不同意性行等罪に該当する行為をした場合、家庭裁判所は、原則として、管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならないとされています(少年法62条2項2号)。
もっとも、家庭裁判所は、例外として、特段の事情がある場合は保護処分を出すことができるとしています。特段の事情としては、「調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」とされています(但書)。
裁判例では、家庭裁判所は、原則どおり、検察庁の検察官に事件送致しました。
3 原則公訴提起
検察官は、原則として、「家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起しなければならない。」とされています(少年法45条5号本文)。
もっとも、検察官は、例外として、特段の事情がある場合、公訴を提起しないことも可能です。条文では、「送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないか、又は犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するときは、この限りでない。送致後の情況により訴追を相当でないと思料するときも、同様である。」(同号但書)とされています。
裁判例では、検察官は、事件送致後に被害者との間で示談が成立したことを踏まえて公訴提起せず、家庭裁判所に再び事件を送致しました。
4 最後に
このように、特定少年が不同意性行等罪を犯した場合、原則として、検察官送致となり、起訴され、実刑判決となります。裁判例の事案では、家庭裁判所は少年院(収容3年)の保護処分としましたが、これは例外的な事案ということになります。
