1 はじめに
家事調停では、合意に相当する審判がなされる場合がありますので、説明していきます。
2 合意に相当する審判
家事事件手続法277条1項本文によれば、「人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。」とされています。
「次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合」とは、具体的には以下の2つの要件になります。
①当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。
②当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消しの原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。
3 具体例
嫡出否認請求の調停では、まず、申立人である子と相手方である男性(前夫)との間で、「申立人は相手方に対し、申立人が相手方の嫡出子であることを否認する。」という申立ての趣旨どおりの審判を受けることについて合意が成立していることが必要です(1号)。また、申立人と相手方の双方が嫡出否認の原因となる事実について争わない場合ことが必要です(2号)。
次に、裁判所は、「必要な事実の調査」として、申立人と相手方双方から出生前の関係性を聴取したり、双方が提出した血液型に関する書類などを調査します。その上で、「申立人は相手方に対し、申立人が相手方の嫡出子であることを否認する。」という申立ての趣旨どおりの審判を受けることについての合意が「正当と認めるとき」は、合意に相当する審判を行うことになります。
4 異議申立て
家事事件手続法279条1項によれば、「当事者及び利害関係人は、合意に相当する審判に対し、家庭裁判所に異議を申し立てることができる。」とされています。
また、同法2項では、「前項の規定による異議の申立ては、二週間の不変期間内にしなければならない。」とされています。
このように、当事者などは、合意に相当する審判に対し、2週間以内に異議申立てをすることができます。
そして、2週間以内に異議申立てがなされない場合、「合意に相当する審判は、確定判決と同一の効力を有する。」とされています(家事事件手続法281条)。