1 はじめに
所有者不明土地・建物管理制度について説明していきます。
2 制度趣旨
所有者不明の土地や建物は適切な管理がなされず社会経済上の不利益を生じさせることになります。現行法では、このような場合、不在者財産管理人や相続財産管理人などが裁判所により選任され、所有者に代わって土地等の管理を行っていました。しかし、不在者財産管理人等は、所有者の有する土地建物以外の財産をも管理することになるので、高額の予納金が必要となりました。また、土地等が共有関係にあり、複数の共有者が所在不明の場合、共有持分ごとに不在者財産管理人等を選任しなければいけないので、その分、予納金が高くなるという問題もありました。さらに、所有者を全く特定できない場合は不在者財産管理人等を選任することができないという問題もありました。
そこで、新法では、所有者不明の土地や建物を対象として、所有者不明土地(建物)管理人が選任されることになりました(民法264条の2、264条の8)。
これにより、所有者不明土地(建物)管理人は、土地(建物)だけを管理すれば足り、それ以外の財産を管理することはないので、その分、不在者財産管理人等に比べて予納金が低額になりました。また、土地等が共有関係にあり、複数の共有者が行方不明であってとしても、所有者不明土地(建物)管理人は一人だけ選任されるので、予納金が高額になることもなくなりました。さらに、所有者を全く特定できない場合でも所有者不明土地(建物)管理人を選任することができることになりました。
3 所有者不明土地の管理
1 発令要件など
裁判所は、以下の要件を満たす場合は、所有者不明土地管理命令をすることができます(民法264の2第1項)。
①「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地」であること
②「必要があると認めるとき」であること
③請求が利害関係人よること
裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければなりません(4項)。
2 所有者不明土地管理人の権限
所有者不明土地等の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属することになります(民法264条の3第1項)。
所有者不明土地管理人は、円滑な管理のため、「保存行為」と「所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」は裁判所の許可なく行うことができます。これらを超える行為については、所有者への影響が大きいので、裁判所の許可が必要となります(2項)。
3 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い
所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人が原告又は被告となります(民法264条の4)。例えば、土地上の動産が残置されている場合、所有者不明土地管理人は原告となり、その動産の所有者を被告とする妨害排除請求訴訟を提起することができます。
4 所有者不明土地管理人の義務
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければなりません(民法264条の5)。
5 所有者不明土地管理人の報酬等
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができます(民法264条の7)。
4 所有者不明建物の管理
前提として、所有者不明土地管理命令は、土地上の建物はその対象とされていません。
所有者不明建物管理命令の発令要件は、所有者不明土地管理命令と同じです(民法264条の8第1項)。
所有者不明建物管理命令の効力は、当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(例えば土地賃借権)にも及びます(第3項)。
5 最後に
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