1 はじめに
改正法では共有の見直しながされ、その一つとして共有物を使用する共有者の義務についての規律が改正されました。
2 改正の内容
「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」とされています(民法249条1項)。もっとも、共有物を使用する共有者が、対価なしに自己の持分を超えて使用することを認める理由などありません。そこで、改正法では「共有物を使用する共有者は、・・他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。」(同条第2項)。なお、「別段の合意がある場合を除き」とされていますので(同条第2項)、共有者間で無償とする合意がなされている場合、共有物を使用する共有者は対価なしに自己の持分を超えて使用することができます。
また、共有物を使用する共有者が自己の持分を超えて共有物を使用する場合、他人の共有持分を使用していることになります。そのため、「共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。」とされています(同条第3項)。例えば、共有者が過失により共有物を毀損するなどした場合、他の共有者に対し善管注意義務違反による損害賠償責任を負うことになります。
3 遺産共有の場合
相続人間の共有は民法249条以下の物権法上の共有と解されています。そのため、相続人の一人が遺産を使用する場合、その者は(相続の承認後)善管注意義務を負うことになります(民法249条3項)。これに対し、熟慮期間中は「その固有財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理すれば足ります(民法918条)。