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コラム:相隣関係の見直し~継続的給付を受けるための設備設置権・設備使用権

2024.07.31
1 はじめに

継続的給付を受けるための設備設置権・設備使用権の規律について説明していきます。

 

2 発生要件

設備設置権・設備使用権が発生するためには、
①「他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ・・継続的給付・・を受けることができないとき」
②「継続的給付を受けるため必要な範囲内」であること
であることが必要となります(民法213条の2第1項)。

なお「他の土地」とあるので、必ずしも隣地に限定されません。また、「電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付」とありますが、ここでいう「その他これらに類する継続的給付」とは例えばインターネットになります。

 

3 設備の設置・使用の態様

他人の土地等の所有権を侵害することになるので、「設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備・・のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。」とされています(同条第2項)。

 

4 設備設置権・設備使用権を行使するための手続

設備設置等を行う者は、「あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。」とされています(同条第3項)。この趣旨は、他の土地等の所有者に対して、設備設置権等の要件該当性を判断し、他の方法などを提案する機会を与えることにあります。

ところで、隣地使用権の場合、「ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。」とされていました(民法209条第3項但書)。これに対し、設備設置権・設備使用権の場合はこのような事後通知の規定は存在しません。隣地使用権は他の土地の所有権を一時的に侵害するにとどまるのに対し、設備設置権等は継続的に侵害することになるので、その手続保障が手厚くなっています。

 

5 設備を設置・使用する工事のための一時的な土地使用

設備設置等を行う者は、「他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。」とされています(同条第4項第1文)。

この場合、他の土地の所有権を一時的に侵害するという点で隣地使用の場合と利益状況が同じなので、隣地使用権の規定が準用されています(同項第2文)。

 

6 設備設置権に関する償金

他の土地に設備を設置する者は、「償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。」とされています(同条第5項)。

また、設備を設置する工事のために一時的に土地を使用する場合(同条第4項)は、1年ごとではなく、直ちに償金を支払う必要があります(同条第5項カッコ書)。

 

7 設備使用権に関する償金・費用負担

他人が所有する設備を使用する者は、「その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。」とされています(同条第6項)。また、設備使用により利益を得ているのであれば費用を負担するべきであるという観点から、「その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。」とされています(同条第7項)。

 

8 土地の分割等と設備設置権

「分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。」とされています(213条の3第1文)。

上記の土地所有者は、継続的給付を受けるために設備を設置する場合、他の土地を使用しなければいけないことを予め理解した上で分割したと解されることから、他の分割者の所有者のみ設備を使用することができるとされました。その際、他の分割者に対し償金を支払う義務はありません(第2文)。

 

9 最後に

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