1 はじめに
民事訴訟での遮へい措置について解説していきます。
2 条文
1 当事者等との間の遮へい
「裁判長は、事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係(証人がこれらの者が行った犯罪により害を被った者であることを含む。次条第二号において同じ。)その他の事情により、証人が当事者本人又はその法定代理人の面前(同条に規定する方法による場合を含む。)において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その当事者本人又は法定代理人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。」(民事訴訟法203条の3第1項)
2 傍聴人との遮へい
「裁判長は、事案の性質、証人が犯罪により害を被った者であること、証人の年齢、心身の状態又は名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。」(民事訴訟法203条の3第2項)
3 遮へい措置が設けられた理由と厳格な要件
証人の精神的な不安や緊張感を軽減するために、当事者本人またはその法定代理人と証人との間、傍聴人と証人との間を適宜の方法により遮へいすることが認められることになりました。もっとも、尋問権の行使が妨げられたり、公開主義が形骸化するので、適用範囲は限定的となりました。このことは以下の文献でも言及されています。
「証人の姿を遮蔽することにより、当事者は証人の表情が分からず、的確に尋問権を行使できず、したがって証明活動が妨げられるおそれがある。傍聴人にとっても、公開主義の意義が矮小化されるおそれがある。そこで本条は、対当事者、対傍聴人の遮蔽等の要件を定め、このような懸念を払拭すると同時に、適用範囲を絞る趣旨で、犯罪被害者を典型例とするとしている(本条1項最初のかっこ書・2項参照)。」(新・コンメンタール 民事訴訟法 第2版)
4 適用範囲
1 当時者等との間
「証人と当事者本人またはその法定代理人との関係とは、例えば、証人がこれらの者が行った犯罪により害を被った者であることなどである」(条解2版1128頁[加藤新太郎])。
2 傍聴人との間
「相当と認めるときに該当しない例としては、証人自身がこの措置を望まない場合、起訴前で犯罪(不法行為)の成否自体が争われているような段階で、証人が見えないような状態での尋問では、損害賠償請求を受けている被告にとって著しく不公平と判断される場合などが想定される(新堂598頁)。」(コンメンタール民事訴訟Ⅳ[第2版])
5 当事者の意見聴取
裁判所は、遮へい措置をするか否かについて、当事者の意見を聴くことになっています(民事訴訟法規則第122条の3第1項)。
6 最後に
以上、民事訴訟と遮へい措置について説明しました。お困りの方はのむら総合法律事務所へご相談ください。
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