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コラム:知人の営む事業のための資金援助が「浪費」に該当するとした裁判例

2024.06.14
1 はじめに

免責不許可事由の一つに「浪費」がありますが、浪費に該当するかが問題となる事案の多くは消費的支出が問題となったケースになります。東京高決平成16年2月9日では破産者による知人の営む事業のための資金援助が「浪費」に該当し、それによって過大な債務を負担したと認定され、最終的に免責不許可と判断されました。

 

2 東京高決平成16年2月9日

「・・・相手方は、飲食代金を負担してもらうなど、甲野との個人的な関係から、Bの代表者の乙山や、その土木部の責任者となった丙川の借入れについて保証人となり、いずれも事業の失敗により、その返済責任を負うような事態になったにもかかわらず、その後も、甲野に言われるまま、Cや、甲野の経営するフィリピンパブのため、みずから資金の調達を続けたり、その債務の保証人となるなどしていたものである。
しかし、・・・相手方が、上記のような資金投下をしても、それが確実に回収できる見通しはほとんどなかったと考えられる。それにもかかわらず、相手方がA電設の従業員らに虚言を弄して借金を重ねてまで、甲野にこのような資金援助という形の支出を続けたのは、すでに相手方が甲野の関係で、多額の保証債務を負担しており、甲野が支払ができなくなれば、直ちに相手方にその責任が及ぶという関係にあったことのほか、上記のような、相手方と甲野との個人的な関係や、相手方自身の遊興の目的等もあったからと推認される。
そして、相手方は、当時、A電設の営業次長という立場にあったものであり、また、自宅の土地建物も有していたと認められるけれども、上記のような相手方が負担しただけの1億円以上の債務を返済できるだけの収入や財産を有していたとは到底認められない。」

「このように、相手方は、甲野に対する資金援助という形で、その回収の見通しがほとんどなかったにもかかわらず、その地位、職業、収入及び財産状態に比して通常の程度を越えた支出をしたものである
これは、前後の思慮なく財産を蕩尽したものであり、破産法375条1号の「浪費」に該当する。そして、相手方が、それによって、過大な債務を負担したことは上記(1)のとおりである。なお、上記法条の「浪費」に当たるためには、必ずしもそれが消費的支出であることを必要とするものではないが、本件では、甲野への資金援助を通じて、相手方も、フィリピン旅行やフィリピン女性に便宜を図るなどの遊興的な利益を得ていたことなどからすれば、本件の支出の中には、相手方の消費的支出に当たる部分もあると認められる。
そうすると、本件では、破産法375条1号の「浪費ヲ為シ因テ過大ノ債務ヲ負担スルコト」に該当する事実があり、同法366条の9第1号の免責不許可事由が存在するものといわなければならない。」

 

3 最後に

このように「浪費」に該当するかは「その地位、職業、収入及び財産状態に比して通常の程度を越えた支出をした」か否かによって判断されることになります。したがって、FXや競馬の支出があったり、ブランド物の衣類を購入していた場合、直ちに「浪費」に該当するわけではなく、それらの支出が破産者の地位、職業、収入および財産状況と比べて過大か否かによって判断することになります。

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