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コラム:別除権者の不足額に対する配当に関し破産管財人の善管注意義務違反が問題となった裁判例

2024.06.02
1 はじめに

別除権者に対していわゆる「不足額」がないことを前提に配当を実施した破産管財人に善管注意義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例として札幌高判平成24年2月17日を紹介します。

 

2 事案

平成22年1月12日、Z(株式会社)につき破産手続が開始され、Y(弁護士)がZの破産管財人に選任された。

X(日本政策金融公庫)は、いわゆる別除権者(破産法65条1項、2条9号、2条10号)であって、Zの所有する本件土地・建物に抵当権の設定などを受けていた。

Xは、Zに対し、元利金合計3億2003万4541円の貸金債権を有していたが、平成22年2月23日、別除権不足額として7583万2531円を届出債権1として届け出た。(破産法111条2項、108条1項本文)。また、これとは別に、平成22年2月25日、元利金合計719万8234円を届出債権2として届け出た(破産法111条1項)。

その後、Xの別除権の対象となる本件土地・建物は任意売却が行われ、その売却代金の一部がYからXに支払われるなどしてXの別除権は消滅した。これによって別除権不足額は2億5211万9167円(第1審判決の認定では、2億5256万4702円)となった。

平成22年7月28日、本件破産事件の第2回期日(一般調査期日含む)が開催された。

平成22年8月20日、本件破産事件における換価業務がすべて終了した。

平成22年9月8日、Yは、裁判所書記官に対し、最後配当の許可を申請した。裁判所書記官は、9月14日、最後配当を許可した(破産法195条2項)。

Yは、配当の公告をし、当該公告は平成22年9月28日付け官報に掲載された(破産法197条1項、10条1項)。最後配当の除斥期間は、同年10月12日までとなった(破産法198条1項)。

平成22年10月13日、Yは、裁判所に対し、除斥期間内にXから別除権不足額の証明がされなかったため(破産法198条3項)、別除権付債権に関する配当手続に参加することができる債権額は0円となったこと、異議期間が同月19日までであること(破産法200条1項)を報告した。

平成22年10月19日、Yは、裁判所に対し、配当手続に参加することができる債権の総額を3億1718万3184円、配当をすることができる金額を5041万8384円などと記載した配当表を提出した(破産法201条1項)。上記配当表には、Xの確定債権額が3億2723万2765円であるのに対し、配当手続に参加できる債権額は719万8234円(届出債権額2の元利金合計)と記載されていた。

平成22年10月21日、Xは、Yから配当通知書(破産法201条7項参照)を受領して初めて本件破産事件において配当手続が実施されていることを知った。

平成22年10月22日、Xは上記配当表に基づいて配当を実施した。

平成22年10月27日、破産手続終結決定をした。

Xは、Yに対し、Yが別除権不足額の証明がないものとして配当を行ったことについて善管注意義務違反があるとして損害賠償請求をした(破産法85条2項)。

 

3 判旨

一審、二審ともにYの善管注意義務違反を認めた上で、Xが不足額確定報告書を提出していなかったことや配当異議をしなかったことについて過失4割としました。二審は一審の判断をほとんど踏襲しているため、一審の善管注意義務違反に関する判示の一部を引用します。

「・・・本件破産事件において、被告は、自ら関与して対象不動産の任意売却及びその受戻しを行い、別紙別除権目録記載の別除権が消滅し、又はこれによって担保される額が0円となったことを認識していたのであり、原告が合計1億2300万5578円の弁済を受けたことも把握していたから、法定充当の規定に従って計算を行い、届出債権1の残額すなわち別除権不足額を認定することができ、そのように認定すべきであった。そして、法定充当の規定によって計算される届出債権1に係る別除権不足額は、別紙法定充当計算書記載のとおり、2億5256万4702円である。」
「・・・以上のとおり、別除権者が不足額確定報告書を提出するという実務の慣行に反して、不足額確定報告書が提出されない場合、破産管財人としては、直ちに別除権不足額の証明がなかったものと扱うことはできないところ、自ら充当計算を行うときは、当該別除権者との間で充当方法に関して意見が食い違ったり、違算をしたりするおそれもあるから、別除権者に対し不足額確定報告書の提出を求め、不明点があれば更に問い合わせるなどして、別除権不足額を認定するのが相当であり、被告としては、このような措置をとることでも足りたと考えられる。」
「・・・届出債権1(別除権不足額は2億5256万4702円)を配当手続に参加できる債権として扱わずに配当表を作成し、これに基づいて配当を行ったことは誤りであり、破産管財人としての善管注意義務に違反する。」

 

4 最後に

破産について一般的な説明は下記の関連記事をご確認ください。

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