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コラム:破産債権査定の申立ての除斥期間が短縮される場合の裁判例

2024.06.12
1 はじめに

債権査定申立ては債権調査期日から1か月以内に行うことになりますが、例外的に配当の除斥期間との関係で短縮される場合があります。以下では、1か月以内に行われた債権査定申立てが却下された裁判例(東京地裁平成23年9月29日)を紹介します。

 

2 事案の概要

破産者は、平成22年4月9日、東京地裁において破産手続開始決定を受けた。

原告(債権者)は、平成22年5月10日、破産債権者として破産債権の届出を行った(破産法111条1項)。

被告(破産管財人)は、原告訴訟代理人(平成22年10月22日付受任通知兼連絡書)および原告本人に対し、平成22年11月4日、異議通知書および異議通知書の理由説明書をファックスした(破産規則43条4項)。

被告は、平成22年11月9日の債権調査期日の際、原告届出債権の一部について認め、その余について認めず、異議の認否を行った(破産法121条1項)。

裁判所書記官は、平成22年11月10日、簡易配当を許可した(破産法204条1項)。

被告は、同月11日、「簡易配当の御通知」を原告本人に送付したが(破産法204条2項)、原告訴訟代理人には送付しなかった。

原告は、平成22年12月8日、破産裁判所に対し、被告を相手方として破産債権査定の申立てをした(破産法125条1項)。

しかし、同裁判所は、同月17日、上記申立ては除斥期間経過後になされたものであるとして申立てを却下した(破産法125条3項参照)。理由は、本件破産債権においては、同年11月17日に被告により届出がされたとみなされるのであるから(後述の運用)、破産債権査定の申立ての除斥期間は、債権調査期日から1カ月の不変期間によってではなく(破産法125条2項)、同月24日の経過により簡易配当に関する除斥期間が経過している(破産法205条、198条1項)からである。

なお、東京地裁は、簡易配当の通知発送日の翌週の水曜日を「通常到達すべきであった時」(破産法204条4項)として扱い、その日を除斥期間の起算日とする運用を行っている。

 

3 判旨

「原告は、被告が本件異議通知書等は原告本人でなく原告訴訟代理人に送付したのに、本件簡易配当通知を原告訴訟代理人でなく原告本人に送付したことは、手厚い手続保障がされたとはいえないなどと主張する。
しかしながら、本件異議通知書等は原告本人にもファックスされたと認められる(《証拠略》)から、原告の主張は前提を欠いている。のみならず、そもそも異議通知書や簡易配当の通知先は破産債権者であり(破産規則43条4項、破産法204条2項)、破産債権者は債権届出書に通知等を受けるのに必要な事項を記載しなければならず、それを変更する場合はその旨の届出をする必要がある(破産規則32条、33条)ところ、本件では、債権届出書には原告の住所地が記載されており、原告訴訟代理人の受任通知兼連絡書には通知先を代理人の事務所にする旨の記載はない(《証拠略》)から、異議通知書や簡易配当の通知先は原告住所地となる。したがって、被告としては、破産法上、原告本人の住所地に通知する義務があったといえ、本件簡易配当通知を原告本人に通知し原告訴訟代理人にしなかったことを問題とする余地はない。そうすると、本件における破産債権査定の申立ては除斥期間経過後にされたものであるというほかない。」

 

4 最後に

破産債権査定申立ての期間が短縮されることによる不利益を回避するため、東京地裁では、破産管財人の異議通知書に破産債権査定申立ての期間について注意書きを付すことにより注意喚起しています。これに対し、大阪地裁では、除斥期間の満了日と破産債権査定申立ての満了日が一致するようにしています。

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