1 はじめに
免責許可決定の確定後、破産債権者が破産債権者表に基づき強制執行をすることができるか、その場合に執行文付与の訴えを提起することができるかが問題となった最判平成26年4月24日を紹介します。
2 事案の概要
原告は、破産事件において、求償債権兼不法行為による損害賠償請求権等として合計292万0751円の破産債権の届出をし、破産管財人は、債権調査期日において、求償債権兼不法行為による損害賠償請求権等として合計289万8051円を認め、2万2700円は認めなかった。
裁判所書記官は、以上の内容を破産債権者表(以下「本件破産債権者表」という。)に記載した(破産法115条1項、124条2項)。その後、原告に対して61万7540円が配当された。
本件破産事件においては被告は免責許可決定がされ、同決定が確定し(同法253条1項)、本件破産債権者表にその旨が記載された(同法253条3項)。
原告は、本件破産債権が「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当すると主張して(同法253条1項2号)、被告に対し、破産債権者表について執行文付与の訴えを提起した(民事執行法33条)。
一審、二審は、いずれも、非免責債権に該当するか否かは執行文付与の訴えの審理の対象とはならないとして執行文付与の訴えを却下した(民事執行法20条、民事訴訟法140条)。
3 最高裁
最高裁も、一審、二審同様、執行文付与の訴えを却下しました。
「民事執行法33条1項は、その規定の文言に照らすと、・・・破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かを審理することを予定していないものと解される・・・。このように解しても、破産事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官は、破産債権者表に免責許可の決定が確定した旨の記載がされている場合であっても、破産債権者表に記載された確定した破産債権がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるときには、民事執行法26条の規定により執行文を付与することができるのであるから、上記破産債権を有する債権者には殊更支障が生ずることはないといえる。そうすると、免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されないと解するのが相当である。」
4 採るべき手段
本判決の立場を前提とした場合、原告は、破産事件の記録のある裁判所の裁判所書記官に対し、単純執行文の付与を申し立てることになります(民事執行法26条)。そして、同書記官が破産債権者表に記載された破産債権が非免責債権(破産法253条1項各号)であることが認めた場合、執行文が付与されることになります。
他方、執行文付与を拒絶された場合、その処分に不服があれば、執行文付与拒絶に対する異議申立てをすることになります(民事執行法32条1項)。
また、原告は、当該破産債権に基づく給付訴訟を提起し、当該債権が非免責債権であることを主張立証することもできます。
5 最後に
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