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コラム:破産管財人は破産債権の届出を催促する義務があるのか

2024.08.09
1 はじめに

破産管財人には、破産債権者に対し破産債権届出期間及び破産債権調査期日の通知が適切にされているかを確認し、破産債権の届出を催促する義務があるのかが問題となった大阪高判平成28年11月17日を紹介します。

 

2 事案の概要

破産会社は、平成22年4月19日、破産手続の開始を申し立て、裁判所は、平成22年5月13日、破産債権届出期間並びに破産債権調査期間及び期日を定めないで、破産会社を破産者とする本件破産手続の開始決定をなした(破産法31条2項)。

平成22年11月30日、第2回債権者集会期日が実施され、破産裁判所は、本件破産手続の破産債権届出期間を平成23年1月18日まで、破産債権調査期日を同年2月22日午前10時30分とすることに決定した(破産法31条3項)。

破産裁判所は、平成22年12月1日、債権者に対し、普通郵便で、破産債権届出期間等を通知する書面を発送した(破産法32条4項、3項1号、破産規則7条)。なお、控訴人は、同書面を受領していないと主張している。

破産裁判所は、12月8日、破産債権届出期間等について官報公告した(破産法32条4項、1項3号、10条)。

原告は、破産債権届出期間の期間中のほか、簡易配当までの期間も含めて、破産裁判所に対し、破産債権の届出をすることがなかった。

破産管財人は、平成23年11月28日、破産裁判所の裁判所書記官に対し、簡易配当の許可を申請し、配当表を提出した。なお、同配当表には、原告は記載されていなかったが、原告が記載されていた場合は、配当が見込まれた。破産裁判所の裁判所書記官は、同月28日、被告の申請した簡易配当を許可した(破産法204条1項3号)。

破産管財人は、同年12月27日、前記割合による簡易配当を実施した。

破産裁判所は、平成24年1月31日、第7回債権者集会を開催し、本件破産手続を終結する旨の決定をした(破産法220条1項)。

破産債権者であった控訴人は、本件破産手続の破産管財人であった被控訴人に対し、破産管財人には破産債権者に対し破産債権届出期間及び破産債権調査期日の通知が適切にされているかを確認し、破産債権届出を催促すべき義務があったところ、被控訴人がこれらを怠ったと主張して、控訴人が得られたであろう配当額の損害賠償金などの支払いを求めた(破産法85条2項)。

 

 3 判旨

「控訴人は、被控訴人には、控訴人に対し本件通知書が適切に発送されているか確認すべき義務及び破産債権届出を催促すべき義務があったと主張する。しかし、知れている破産債権者に対して破産債権届出期間等の通知を行う義務を負うのは破産裁判所であるから、破産管財人が規則七条により通知に関する補助的な事務を取り扱うとしても、通知事務そのものに関して法的義務を負うものではないことは、原判決の判示するとおりである・・。破産管財人が、破産債権者に対して、自らは直接担当しない破産債権者に対する通知を破産裁判所が適切に行ったか否か確認すべき義務があることを根拠付ける規定等は見当たらない。」

「控訴人は、本件において、被控訴人とのやり取りから控訴人の配当を受ける意思は被控訴人にも明らかであったこと、被控訴人は控訴人の債権届出がないことを気付いていたことを指摘する。しかし、破産債権の届出は、本来、破産債権者の自由な意思によって行われるものであること、破産管財人は、破産債権者を公平に取り扱う立場にあることからすると、控訴人が配当を受ける意思があることを破産管財人が知り得たか否かという具体的事情によって、破産管財人の善管注意義務の有無が左右されるものとはいえない。」

 

4 最後に

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