1 はじめに
破産債権者が配当を受けるためには債権届期間内に破産裁判所に債権届出書を提出しなければなりません(破産法100条1項、同111条1項)。提出後、破産管財人はこれを認否することになります。
破産管財人が例えば破産債権の額について否認した場合、これに不服のある破産債権者は裁判所に対し破産債権査定の申立て(破産法125条1項)をすることができます。
破産債権者は、破産債権査定決定に不服がある場合、裁判所に対し破産債権査定異議の訴えを提起することができます(同126条1項)。
以上の破産債権確定の流れの具体例として東京地判平成28年7月19日を紹介します。
2 事案
平成元年7月15日、原告とAは婚姻した。
平成25年8月頃、B弁護士は、Aとの離婚に関する交渉等につき原告から委任を受けた。
平成25年8月10日頃、B弁護士は、Aに対し、「退職金が支払われたら,その時点で1800万円をX1さんに支払う。(破産申立は、その後にします)」との条項を含む、原告がAに対して求める条件を列挙した書面を交付し、その内容を了承するよう要求した。
平成25年10月16日、A代理人弁護士は、B弁護士に対し、確定していない財産分与請求権に基づく請求には応じられないとの立場を明示した上、Aの破産手続において破産財団に組み入れられるべき資産である退職金から財産分与の一部を先に支払うよう要求することは控えるよう求める旨通知した。
平成25年11月22日、Bは原告の代理人としてAを相手方として離婚調停を申し立てた。
平成26年4月30日、Aにつき破産手続開始決定がされた。
平成26年5月26日(債権届出期間中)、Bは、原告のAに対する破産債権として次のアないしウの各債権を届け出た。
ア 離婚に伴う財産分与請求権2300万円 ※ただし離婚未了
イ 慰謝料請求権300万円
ウ 婚姻費用132万円
原告が届け出た上記各債権に対し、破産管財人である被告は、次のとおり認否した。
ア 700万円は認め、1600万円は認めない。
イ 全て認める。
ウ 全て認める。
平成27年4月24日、原告とAは、調停離婚した。離婚および年金分割の按分割合のほかにはいかなる事項も合意されることなかった。
平成27年5月頃、原告は被告を相手方として本件破産事件の破産裁判所に対しその額等について破産債権査定の申立てをした(破産法125条1項)。
平成27年6月1日、本件破産事件の破産裁判所は、破産債権査定決定において財産分与請求権の額を被告が認めた額と同額である700万円と査定した(同法125条3項)。
平成27年6月26日、原告は破産裁判所に対して破産債権査定異議の訴えを提起した(同126条1項、2項)。
3 判旨
「・・・以上の検討によれば、原告が破産債権として届け出た財産分与請求権の額を、被告が認めた額と同額である700万円と査定した本件査定決定は、正当なものとして是認することができるから、これを認可することとして、主文のとおり判決する。」
4 最後に
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