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コラム:破産手続と相殺について

2024.08.06
1 破産法71条3号

破産債権者は、「支払の停止があった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき」、相殺をすることはできません。

 

2 破産法71条3号の趣旨

破産債権者において支払の停止があった後に債務を負担した場合にこれを受働債権とする相殺を認めた場合、破産債権についての債権者間の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続の趣旨が没却されることいなるため、このような場合に相殺を禁止しなければなりません。

他方で、破産債権者が支払の停止があったことを知らなかった場合、相殺の担保的機能に対する破産債権者の期待は合理的なものであって、これを保護することとしても、破産債権についての債権者間の公平・平等な扱う趣旨を没却するものではないので、相殺を禁止しなくてもよいことになります。

 

3 大阪地判平成30年11月15日
1 事案の概要

破産会社の代理人弁護士らは、平成29年9月29日(金曜日)、被告銀行に対し、自己破産の受任通知書(本件受任通知)を発送した。同月30日(土曜日)、受任通知は被告銀行の郵便受けに投函された。

同年10月2日(月曜日)、破産会社の口座に本件各振込入金があり、そのうち最も銀行入金時刻が同日午前9時04分であった。被告銀行は、同日、本件受任通知の封筒に受付印を押印した。

破産会社の破産管財人である原告は、被告銀行に対し、破産会社と被告との間の預金契約に基づき、破産会社の預金口座に振り込まれた183万4006円などの支払いを求めた。

これに対し、被告は、被告が原告に対して有する貸付債権をもって上記183万4006円の払戻請求権とその対当額において相殺した旨主張した。他方、原告は、被告による上記相殺は破産法71条1項3号に違反する無効なものと主張した。

 

2 裁判所の判断

被告は平成29年10月2日午前11時に受任通知を受け付けた=この時点で初めて支払停止の事実を知ったと主張したところ、裁判所は被告の主張が不自然ではないとし、被告の相殺の意思表示は有効であるとしました。

 

4 支払停止の事実を知らせる方法

郵便で自己破産の受任通知を発送した場合、本件のような問題が生じることになるので、代理人としては、銀行の営業時間内に電話したり、受任通知をFAX送信することになります。

 

5 最後に

破産について一般的な説明は下記の関連記事をご確認ください。

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