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コラム:破産手続と動産売買先取特権

2024.08.05
1 はじめに

破産手続において動産売買先取特権(別除権。破産法2条9号、65条)が問題となった東京地裁平成3年2月13日を紹介します。

 

2 事案

原告と破産会社は、昭和40年頃から、破産会社が代日本印刷に納入する封筒の製造を原告に注文し、原告はその封筒を製造しては破産会社に販売し、その代金を毎月末日締め翌月末払いとする継続的供給契約を締結し取引を継続してきた。

原告は、上記継続的供給契約に基づき260万1050円相当の封筒を製造し、破産会社に売り渡し、破産会社は、その封筒を297万1200円で大日本印刷に売り渡した。

原告は、平成2年5月30日、破産会社に対する売掛金債権を被保全権利として、破産会社の大日本印刷に対する売掛金297万円について仮差押命令を申請、同日に仮差押決定を得た。そして31日、第三債務者である大日本印刷に同決定書が送達された。

破産会社は、平成2年6月5日、破産手続開始決定を受け、被告が破産管財人に選任された。

原告は、平成2年6月26日、動産売買先取特権に基づく物上代位権の行使(民法311条5号、321条、304条1項)として、被告を相手方として本件債権の差押命令を申請した。

破産管財人は、平成2年7月11日、売掛金297万円を回収した。

上記申請について差押命令は、平成2年8月31日に発せられ、同年9月5日に大日本印刷、同年9月10日に破産管財人にそれぞれ送達された。

原告は、被告に対し、主位的に先取特権の確認請求、副位的に不法行為に基づく損害賠償請求を行った。

 

3 判旨

裁判所は、原告の請求をいずれも棄却しました。以下、主位的請求について引用します。

「金銭債権につき将来における強制執行を保全する目的でされた仮差押は、先取特権に基づく物上代位権行使の要件である「差押」(民法第三〇四条第一項)に当たらないものと解するのが相当である。・・・したがつて、動産売買の先取特権に基づく物上代位権行使のための差押は、転売代金債権に対する差押の方法によるべきであつて、仮差押の方法によることはできないものというべきであるし、右転売代金債権について強制執行保全のための仮差押がなされた後に債務者が破産宣告を受けた場合には、破産財団に対しては右仮差押の効力が失われる結果(破産法七〇条第一項本文 ※現行42条2項)、右転売代金債権につき第三債務者による弁済又は破産管財人による債権譲渡等の処分が行われる前に、改めて破産管財人に対して先取特権に基づく物上代位権行使のための差押をしない限り・・・、破産管財人に対して優先弁済権を主張できないものというべきである。」

「・・本件仮差押は、原告の破産会社に対する売掛代金債権を被保全権利として、将来における強制執行を保全するためにされたものであることが明らかであるから、破産法第七〇条第一項本文(※現行42条2項)の規定により、破産財団に対してはその効力を失つたものといわなければならない。したがつて、被告が、平成二年七月一二日本件供託金の払渡しを受けたことにより、破産会社の大日本印刷に対する本件債権は弁済により消滅したものというほかはなく、原告が本件債権の上に有していた先取特権に基づく物上代位権も消滅に帰したというべきであるから、その後に発せられた物上代位権の実行手続としての本件債権の差押命令は、その効力を生ずるに由ないものというべきである。

参考 破産法42条2項
「前項に規定する場合(※破産手続開始の決定があった場合)には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行・・で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。」

 

4 最後に

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