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コラム:破産者が財産を隠匿等したことにつき免責不許可となった裁判例②

2024.08.03
1 はじめに

前回、免責不許可事由の該当性、裁量免責の可否が問題となった東京地判平成24年8月8日を紹介しました。今回も、財産隠匿などにより免責不許可事由が認められ、裁量免責が認められなかった神戸地判伊丹支部平成23年12月21日を紹介します。

 

2 事案の概要

破産者の父は、昭和58年3月1日、破産者を死亡保険金受取人とする定期特約付養老保険の契約をしていた。

破産者の父は、平成21年1月19日に死亡した。同年2月12日、破産者は明治安田生命保険相互会社から死亡保険金1566万1654円を破産者名義の本件口座に振込送金を受けて受領し、同日1564万円を本件口座から出金した。破産者は、この当時すでに申立代理人の弁護士と委任契約を締結していたが、破産者は申立代理人にも本件口座の存在及び上記保険金の受取りを秘匿していた。

破産者は、平成21年5月21日、破産申立てを行った。債権額は2500万円余とし、財産目録には財産回収見込額は35万3611円であると報告し、現金と預貯金、自動車について自由財産拡張の申立てを行った。なお、この目録には本件口座について記載しなかった。

破産者は、平成21年6月1日、破産手続開始決定を受けた。

破産管財人は、同月9日ころ、転送されてきた東京海上日動火災保険株式会社からの郵便物に本件口座について記載があったことから本件口座の存在を知り、申立代理人に調査を指示した。同月14日、申立代理人から管財人に対して保険金受領が発覚した旨の連絡があった。

その後、破産者は申立代理人との間で音信不通となり、管財人が説明を求めても呼び出しには応じず、連絡も行わず、所在不明となった。

申立代理人は、平成22年2月2日、上記自由財産拡張の申立てを取り下げ、同月4日に申立代理人を辞任した。

破産管財人は、同月3日、本件現金について引渡命令を申し立て、引渡命令が発令され、同命令が確定したが、破産者は引渡しを行わなかった。

破産者は第1回、第3回、第5回の各債権者集会期日には出頭したが、平成22年11月11日の第6回債権者集会期日以降は第10回の最後の期日まで不出頭であった。なお、破産者は、破産管財人の告発により詐欺破産罪で起訴され有罪判決を受けている。

 

3 判旨
1 権利免責

「1 上記において認定した事実によれば、破産者は破産申立て直前に死亡保険金が入金された本件口座の存在を申立代理人にも秘匿し、本件現金について、破産管財人に説明することなく所在不明となっており、破産者の上記行為は破産法252条1項1号所定の債権者を害する目的での破産財団に属する財産の隠匿にあたるというべきである。さらに、破産者が引渡命令を受けてもこれに応じなかった点は同項11号の破産者の義務違反にあたるというべきである。したがって、破産者について同項により免責決定をすることはできない。」

 

2 裁量免責

「2 そこで、裁量免責の可能性について検討するに、上記1のとおり、破産者がそもそも死亡保険金受領時にすでに申立代理人に委任を行っていたにもかかわらず上記隠匿行為に及んだこと、破産申立時に破産者が報告した財産の回収見込額が35万円余であるのに対し、隠匿された本件現金の額は1564万円という多額であって、債務総額の6割以上にのぼること、隠匿が発覚するや破産者は申立代理人とも音信不通となり、管財人の呼び出しにも応じず、債権者集会期日にも第6回以降不出頭を続けたこと、有罪判決を受けた後も一切返還に応じていないことからは、破産者に免責を許可すベき事情があるということはできない。」

 

4 最後に

破産について一般的な説明は下記の関連記事をご確認ください。

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