1 はじめに
最判平成28年4月28日は、破産手続開始決定前に契約が締結され、破産手続決定後に発生した生命保険金請求権について、「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」(破産法34条2項)に当たると判断しました。
これに対し、東京高判平成31年4月17日では、火災等共済金請求権が「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するかが問題となりました。
2 事案の概要
破産者は、平成26年8月22日、連合会との間で火災共済契約を交わした。本件共済契約は、平成27年4月1日に自動更新された。
破産者は、平成27年7月1日午後5時、破産手続開始決定を受けた。破産者は、破産手続開始決定後も、自らの資産をもって本件共済契約の共済掛金の支払を継続した。
本件共済契約は平成28年4月1日にも自動更新された。その後の同月25日、本件火災が発生した。連合会は、共済金1397万2000円を供託した。
3 判旨
「本件共済金請求権は、「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」(破産法34条2項)に当たるものであることは前判示のとおりである(引用に係る原判決「事実及び理由」の第3の1(1))。そして、平成28年最高裁判決は、生命保険金請求権に関するものであって、その判断の射程が損害保険金の請求権の性格を有する本件共済金請求権が破産財団に帰属するか否かの問題に直ちに及ぶとはいえないとしても、それが当裁判所の前記判断の妨げとなるものではない。」
※原判決「事実及び理由」の第3の1(1)
「(1) 共済契約の共済金受取人は、当該契約の成立により、当該契約で定める共済期間内に共済事故(火災等)が発生することを停止条件とする共済金請求権を取得するものと解されるところ、この請求権は、共済事故の発生前であっても、上記受取人において処分したり、その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であり、一般的な財産的価値を有するものであるから、破産手続開始決定前に成立した共済契約に基づいて破産者である共済金受取人が有する共済金請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして、上記受取人の破産財団に属するものと解するのが相当である(前掲平成28年4月28日第一小法廷判決参照)。
そして、前記前提となる事実によれば、本件共済契約は、被告Y1についての破産手続開始決定前である平成26年8月22日に締結され、被共済者である被告Y1が共済金受取人とされていたものであるから、破産手続開始決定後に自動更新されていることを踏まえても、本件共済契約に基づく本件共済金請求権は、上記将来の請求権に該当するものとして、被告Y1の破産財団に属し、破産管財人である原告がその管理処分権を有するものであるというべきである。」
4 最後に
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