1 はじめに
法人とその代表者について同時に破産申立てをする場合において、代表者の破産手続申立費用を法人の資産から捻出することが認められるかが問題となった大阪地判平成22年8月27日を紹介します。
2 事案
破産会社の代表取締役Aは、平成21年1月29日、B弁護士を破産会社及びAの破産申立代理人として選任した。
Aは、Bに対し、翌日、破産会社名義の普通預金口座から40万円を振り込んだ。Bは、同振この40万円をAの破産申立着手金として受領した。
破産会社とその代表取締役は、平成21年3月31日、破産手続開始決定を受けた。
破産管財人はBに対し40万円を返還するよう催告した。
3 判旨
以下のとおり、法人と個人は別々の手続であることなどを理由として、Aの受領した40万円は不当利得に当たると判断しました。
「株式会社とその代表者である代表取締役は、法律上、別個の法主体であるから、丙川は、破産会社の代表取締役であったとしても、丙川個人の破産申立着手金を破産会社の財産から支出することは当然には許されない。
この点につき、控訴人は、法人とその代表者である個人が同時に破産申立てをする場合の予納金額や破産管財人選任方法をとらえて、破産手続の実務において法人とその代表者たる個人の財産はほとんど一体として取り扱われているなどと主張しており、法人の代表者である丙川の破産申立着手金を当該法人である破産会社の財産から支出することが正当であると主張するようである。
しかし、破産手続上、法人の破産手続とその代表者たる個人の破産手続が別個の手続であることはいうまでもなく、両破産事件において同一人が破産管財人に選任されたからといって、法人とその代表者である個人の財産が明確に区別されずに一体として取り扱われているとはいえないことは明らかである。かかる取扱いは、両名が本来別人格であることを前提として、破産手続にかかる費用の節減及び手続の迅速化等の面において、共通の管財人を選任して調査に当たらせることが便宜であることなどをその理由とするものと解され、控訴人の主張は失当というほかない。」
4 若干のコメント
法人の資産から代表者の破産申立費用を支出することについて必要性・相当性が認められれば問題視されないことが一般的と思われます。もっとも、本件のように破産会社名義の口座から弁護士名義の口座に直接弁護士費用を振り込む場合は注意が必要といえそうです。
5 最後に
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