1 はじめに
破産者が破産手続開始前に共済契約を締結し、破産手続開始後に共済事故が発生した場合、当該共済事故に基づき発生した共済金請求権は破産財団に属する財産となるかが問題となることがあります。以下、札幌地判平成24年3月29日を紹介します。
2 事案の概要
破産者は、平成21年11月1日、疾病入院特約付きの生命共済契約を締結しました(契約者、被共済者、共済金受取人が破産者)。
破産者は、平成22年12月17日、破産手続開始決定を受けました。
破産者は、平成23年1月19日から同年2月22日までの35日間、治療のため病院に入院し、疾病入院共済金24万8000円の請求権が発生しました。
3 判旨
裁判所は、以下のとおり、上記共済金請求権が、破産法34条2項の「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」として、破産財団に属するとしました。
「そこで検討すると、保険金請求権は、保険契約締結とともに、保険事故の発生を停止条件とする債権として発生しており、保険事故発生前における保険金請求権(以下、「抽象的保険金請求権」という。)も、差押えや処分が可能であると解される。このように、抽象的保険金請求権が、差押えや処分が可能な財産であるとされている以上、破産者の財産に対する包括的差押えの性質を有する破産手続開始決定についても別異に解する理由はなく、保険契約が締結された時点で、破産手続開始決定により破産財団に属させることが可能な財産として発生しているものとみるのが合理的である。したがって、破産手続開始前に締結された保険契約に基づく抽象的保険金請求権は、破産法三四条二項の「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」として、破産手続開始決定により、破産財団に属する財産になるものと解するのが相当である。そして、本件共済契約も保険契約の一であると解されるから、上述したところが本件共済契約にも当てはまるもの解すべきである。」
4 最後に
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