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コラム:死亡保険金受取人である破産者の死亡保険金請求権と破産財団への帰属

2024.07.21
1 はじめに

破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権と破産財団への帰属が問題となった最判平成28年4月28日をご紹介します。

 

2 事案

破産者である甲(夫)と乙(妻)の長男は、平成16年、全国労働者共済生活協同組合連合会との間で、被共済者を長男、死亡共済金を400万円とする生命共済契約(以下「本件生命共済契約」という。)を締結した。受取人は、甲と乙に指定されていた。

長男は、平成23年、日本生命保険相互会社との間で、被保険者を長男、死亡保険金を2000万円とする生命保険契約(以下「本件生命保険契約」という。)を締結した。平成24年4月25日に死亡した。受取人は、甲に指定されていた。

甲と乙は、平成24年3月7日、破産手続開始の申立てをし、同月14日に破産手続開始の決定がなされ破産管財人が選任された。

長男は、平成24年4月25日に死亡した。

甲は、平成24年5月上旬、上記死亡共済金及び上記死亡保険金の各請求手続をして、同月下旬に合計2400万円を受け取った。このうち1000万円(以下「本件金員」という。)を費消し、同年9月、残金1400万円を破産管財人の預り金口座に振込送金した。

破産管財人は、甲乙に対し、不当利得返還請求に基づき、本件金員の返還を求めた。

 

3 判旨

最高裁は、以下のとおり述べて、死亡共済金、死亡保険金はいずれも破産財団となるとし、破産管財人の請求を認めました。

「第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は、当該契約の成立により、当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保険金請求権を取得するものと解されるところ(最高裁昭和36年(オ)第1028号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)、この請求権は、被保険者の死亡前であっても、上記死亡保険金受取人において処分したり、その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され、一定の財産的価値を有することは否定できないものである。したがって、破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして、上記死亡保険金受取人の破産財団に属すると解するのが相当である。」

 

4 最後に

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