TOPICS

コラム:破産手続中に海外へ旅行に行く場合

2024.07.20
1 はじめに

破産手続が開始され、破産管財人が就いた後、破産者が破産手続中に海外へ旅行に行く場合についての法律の定め、裁判例をご紹介します。

 

2 裁判所の許可が必要

破産法37条1項によれば、「破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。」とされています。この規定は、破産者の逃亡や財産の隠匿を防止するとともに、破産者の説明義務の遂行を十分に尽くさせる趣旨の規定になります。

そして、運用上、破産者は破産管財人の同意を得ることとなっています。そのため、破産者は、破産管財人の同意を得た後、裁判所に許可申請を行うことになります(なお、裁判所によっては破産管財人の同意により裁判所の黙示の許可があったものとみなしています)。

 

3 東京高決平成27年3月5日
1 事案

抗告人は、破産管財人に対し、約6か月間、ラオス等にビジネスを目的とした海外渡航の同意申請をした。

しかし、破産管財人は、債権者集会への出頭状況を見て判断をするとの理由で、直ちに同意せしなかった。

そこで、抗告人は、破産裁判所に対し、約2か月間に短縮した上で、無条件で海外渡航の許可を求める申立てを行った。

そうしたところ、破産裁判所は、海外渡航前に開かれる第14回債権者集会(財産状況報告集会)及び免責審尋期日に出頭することを条件として、申請どおり居住地を離れることを許可する旨の原決定をした。

そこで、抗告人は、居住移転の自由の侵害などを理由として東京高等裁判所に即時抗告をした(破産法37条2項)。

なお、本件は債権者申立の事件であり、抗告人は、病気や勾留中であることを理由に一度も債権者集会に出席したことはなかった(ただし代理人は毎回出席していた)。

 

2 裁判所の判断

「・・・以上のような破産法の規定によれば、破産者は、財産状況報告集会等の債権者集会及び免責審尋期日に出頭して、破産に関する事情や免責不許可事由の有無等について説明する義務を負うものである。
これを本件についてみると、抗告人は、・・これまで1回も債権者集会に出頭していないことから、破産裁判所は、本件申立てについて判断するにあたり、抗告人に対し、上記破産者の説明義務を尽くさせるため、本件旅行に出発する直前に実施される予定の債権者集会(財産状況報告集会)及び免責審尋期日に出頭することを条件として、本件旅行を許可したものと認められる。そして、上記のとおり破産者が債権者集会及び免責審尋期日に出頭した上で説明義務を尽くすことは、法に基づく破産者の義務であり、抗告人の債権者集会出頭状況及び海外渡航状況に照らすと、破産裁判所が上記のような条件を付すことには十分な合理性がある。また、抗告人は、当該債権者集会及び免責審尋期日に出頭すれば、本件旅行が可能になるのであるから、上記のような条件を付すことが抗告人の居住・移転の自由を不当に制限するものということもできない。したがって、当該債権者集会(財産状況報告集会)及び免責審尋期日に出頭することを条件に本件旅行を許可した原決定は相当である。」

 

4 最後に

以上、破産手続中に海外へ旅行に行く場合について説明しました。破産について一般的な説明については下記の関連記事をご確認ください。

【関連記事】

✔破産手続一般についての解説記事はこちら▶自己破産

無料相談

無料相談

078-361-3370

078-361-3370

お問い合わせ

お問い合わせ