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コラム:破産手続において債権者一覧表の訂正を怠った代理人の責任

2024.07.14
1 はじめに

破産手続申立てに際し、破産者およびその代理人は債権者一覧表を提出しなければいけません。そして、裁判所は、破産手続開始決定後、債権者一覧表に記載してある債権者に対し破産手続開始の事実を知らせるとともに、その事実を官報に公告する必要があります。これにより、破産債権者は破産手続が始まったことを知り、配当可能な場合は債権届出書を提出して配当を受けることができることになります。

もっとも、破産債権者が、申立時の債権者一覧表に債権者が載っておらず、破産手続が始まった後も破産手続が始まっていることを知らずに債権届出書を提出することができず配当を受けることができなかった場合もありえます。

宇都宮地判令和3年5月13日は、このような事案において、破産債権者が申立代理人と破産管財人に対し受けられるべきであった配当相当額の損害賠償請求をすることになりました。以下、事実関係、判旨を紹介します。

 

2 事実関係

・平成26年1月31日
破産会社は、株式会社B銀行(以下「B銀行」という。)から、5000万円を借り受けた。

・平成31年2月頃
破産会社は、B銀行に対する債務の支払を停止し、本件借受けについて期限の利益を喪失した。

・平成31年2月20日
被告Y1(申立代理人)は、受任通知書を送付。

・令和元年5月7日
破産会社は破産手続開始の申立て。債権者一覧表(以下「本件債権者一覧表」という。)には、平成26年1月31日に借り受けた債務の残高が2456万3000円であることが記載され、備考欄に「今後、X信用保証協会に対し代位弁済請求予定」と記載されていた。なお、本件債権者一覧表の債権者欄に原告は記載されていなかった。

・令和元年5月24日
原告(保証協会、連帯保証人)は、B銀行に対し、本件借受けの保証債務の履行として、2461万0107円を支払った(以下「本件弁済」という。)。これにより、原告は破産手続開始決定前日の時点で2512万9279円の支払を請求する権利(以下「本件求償金債権」という。)を有していた。

令和元年5月27日
原告の担当職員は、本件弁済を行ったことを電話で伝え、残高証明書(以下「本件残高証明書」という。)を送付した。被告Y1は、上記電話の際、原告の担当職員に対し本件破産裁判所に対して本件弁済の事実を報告する旨発言した。

・令和元年7月19日
破産手続開始の決定。債権届出期間を令和元年8月23日までとすることなどが定められた。原告から本件求償金債権について破産債権の届出がされることはなかった。

・令和元年7月30日頃
本件破産裁判所は、破産法32条1項所定の事項を公告し、本件債権者一覧表に記載されている破産債権者に対し、同じ事項を通知(以下「本件通知」という。)した。

・令和元年10月23日
債権調査期日における破産管財人の認否及び破産債権者の異議を経て破産債権が確定

・令和2年1月20日
簡易配当が許可され、その除斥期間は同年2月4日に経過し、同月26日、配当が実施された。原告は、434万3721円の配当を受けることができなかった。

 

3 判旨

本件は、申立代理人、破産管財人ともに被告となった事案ですが、以下では申立代理人の責任について引用します。

「ところで、債務者は、その破産手続開始の申立てに当たっては、破産規則14条1項所定の事項を記載した債権者一覧表を提出しなければならないところ(破産法20条2項)、この債権者一覧表の提出義務については、破産手続開始の決定の後に裁判所が行うこととなる、知れている破産債権者への破産法32条1項所定の事項の通知(同条3項1号、以下「開始決定通知」という。)を適正かつ迅速に行うことを可能とするために規定されたものと解される。そのような趣旨からすると、債務者は、破産手続開始の申立てをした後であっても、少なくとも破産手続開始の決定がなされるまでの間においては、上記提出義務を免れるものではないというべきであり、代位弁済による債権者の変動等の理由で提出済みの債権者一覧表の一部に誤りが生じたことを知った場合には、知れている破産債権者への開始決定通知が適正かつ迅速に行われる前提を確保するために、訂正した債権者一覧表を提出する等の方法により、正確な債権者の氏名及び債権の内容等を裁判所に対して報告する義務を負うというべきである。

裁判所は、令和元年5月27日の事実(赤文字)を重視した上で、申立代理人の報告義務を認めました。

なお、裁判所は、破産管財人の責任を否定し、原告側にも過失(5割)が認められると判断しました。

 

4 最後に

以上、破産手続において債権者一覧表の訂正を怠った代理人の責任について説明しました。破産について一般的な説明については下記の関連記事をご確認ください。

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