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コラム:個人事業主である開業医のレントゲン撮影機は換価されるか

2024.07.11
1 はじめに

個人事業主として小児科・内科を開業している医師が自己破産をした場合、院内にあるレントゲン撮影機は換価されることになるのでしょうか。

 

2 問題の所在

破産法によれば、「差し押さえることができない財産」は破産財団に属しない、とされています(34条3項3号)。

そして、民事執行法によれば、「技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)」は差押禁止財産に該当するとされています(131条6号)。

そこで、小児科・内科の開業医が「主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者」に該当し、かつ、レントゲン撮影機が「その業務に欠くことができない器具その他の物」に該当するとなれば、当該撮影機は差押禁止財産に該当するので破産財団に属さない、つまり換価の対象とならないことになります。

 

3 裁判例

この点について昭和55年12月5日東京地方裁判所八王子支部決定が参考となります。以下、判旨を引用します。

本件記録によれば、申立人は内科、小児科を専門とする個人の開業医であること、申立人が有するレントゲン撮影機は別紙物件目録記載の一台のみであること、内科医が開業する際まず設置する器材の一つがレントゲン撮影機であること、内科医にとってレントゲン撮影は肺炎、老人性結核、肋膜炎、腸閉塞を初めとして臓器全体の迅速かつ適確な診断にとって不可欠であること、国分寺医師会所属医師の全内科医・胃腸科医一七名のうち、レントゲン撮影機を設置していない者は二名に過ぎないこと、申立人においても昭和五五年一〇月中に九回にわたり同目録記載のレントゲン撮影機を使用したこと、以上の事実が認められる。

以上認定事実によれば、申立人は民事執行法第一三一条第六号にいう「技術者その他の主として自己の知的な労働により職業に従事する者」にあたり、別紙物件目録記載のレントゲン撮影機は「その業務に欠くことができない器具」に該当するとみられるから、右物件に対する差押えは許さないと言わねばならない。

このように、申立代理人としては、この裁判例をベースにしてレントゲン撮影機が差押禁止財産に該当することを裁判所や破産管財人に対し説明することが必要となってきます。

 

4 最後に

以上、個人事業主である開業医のレントゲン撮影機は換価されるかについて説明しました。破産について一般的な説明については下記の関連記事をご確認ください。

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