1 はじめに
個人再生の申立時はA社に勤めていたが、手続開始決定後にB社に転職した場合、どのような問題点があるかについて説明していきます。
2 履行可能性について
1 再生手続開始時点
個人再生の場合、再生手続開始時点において、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあ」ることが必要となります(民事再生法221条1項)。つまり、個人再生の場合、そもそも返済予定額を弁済できる見込みがない場合、つまり履行可能性がない場合は、再生手続は開始されません。
2 再生計画認可時点
では、再生手続の開始時点で履行可能性があると判断されれば、再生計画案の認可決定時点でも履行可能性があるとみなされることになるのでしょうか。
この点について、法は、裁判所が「再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき」に該当すると判断した場合は再生計画不認可の決定をすると定めています(民事再生法231条2項1号)。
このように、裁判所は、再生手続開始時点のみならず、再生計画案の認可決定時においても、履行可能性があるかについて判断することになるのです。つまり、履行可能性は、再生手続開始時と再生計画案の認可決定時の2時点で必要となります。
そして、再生手続が開始されてから再生計画案の認可決定がなされるまでの間は、数か月あります。そのため、この間に再生債務者が開始決定時の勤務先を退職し、転職することも想定されるところです。この場合、転職先での収入との関係で履行可能性の有無が改めて審査されることになるのです。
3 手続開始決定後に再就職した場合
以上を前提として、個人再生の申立時はA社に勤めていたが、手続開始決定後にB社に転職した場合について説明します。
B社の収入がA社よりも高額の場合、より履行可能性が高まったといえるので、なんら問題ありません。他方で、B社の収入がA社の時に比べて低くなった場合、その程度にもよりますが、履行可能性が問題となりえます。
4 最後に
以上、個人再生の手続開始決定後に再就職した場合について説明しました。個人再生手続について一般的な説明は下記の記事をご確認ください。
✔個人再生手続についての一般的な説明記事はこちら▶個人再生