1 はじめに
個人再生においては、再生計画案を定めるに際し、少額債権の定めを設けることが認められています。そこで、以下では、形式的平等主義について説明をした上で、その例外である少額債権の定めについて説明をしていきます。
2 形式的平等主義とは
民事再生法229条1項によれば、「小規模個人再生における再生計画による権利の変更の内容は、・・・再生債権者の間では平等でなければならない。」と定められています。
これに対し、通常再生においては、法155条1項本文で「再生計画による権利の変更の内容は、再生債権者の間では平等でなければならない。」としつつも、例外として「・・その他これらの者の間に差を設けても衡平を害しない場合は、この限りでない。」とされています。
このように、通常再生においては実質的平等主義が採用されているのに対し、個人再生においては形式的平等主義が採用されています。簡易迅速な手続を基本とする個人再生の手続に実質的平等主義はそぐわないためです。
3 形式的平等主義の例外
民事再生法229条1項は、形式的平等主義の例外を定めていますが、その一つとして「少額の再生債権の弁済の時期」があります。
「少額の再生債権」とは、他の再生債権に比べて特に金額が少ない債権のことをいいます。
例えば、ある再生債権の再生債権に基づく弁済額が1万2000円だとします。ここで、形式的平等主義を貫いた場合、これを3年間で3か月おきに弁済するとなれば、1回あたりの弁済額は1000円となります。振込手数料は330円とすれば、330円×12=3960円の振込手数料になります。これは弁済額に比べて振込手数料の負担があまりにも大きいといえます。
そこで、少額の再生債権については、初回返済月に一括で返済をすることが認められています。なお、少額の再生債権の基準が問題となりますが、これは各裁判所によって運用が異なるようです。
4 最後に
以上、個人再生と再生計画案の少額債権の定めについて説明しました。個人再生手続について一般的な説明は下記の記事をご確認ください。
✔個人再生手続についての一般的な説明記事はこちら▶個人再生