1 はじめに
破産者の中には、ネットなどで馬券を購入するなどし、これにより借金が膨らんでしまったケースがあります。
本来、破産申立時、競馬をしていたか、していたとして毎月平均いくら馬券を購入していたかについて陳述書に正確に記載する必要があります。また、陳述書に記載しない場合でも、通帳やクレジットカードの利用明細の履歴に「財団法人 競馬・農林水産情報衛星通信機構」「ニッポンチュウオウケイバカイ」といった支払履歴があれば、過去に競馬に興じていたことが発覚することになります。
そして、破産者が競馬などギャンブルをしていた場合、免責不許可となり、借金が消えない可能性があります。
そこで、以下では、どのような場合に浪費に該当するのかについて説明した後、裁量免責について説明していきます。
2 浪費とは
破産者が競馬などギャンブルをしていた場合、「浪費」(破産法254条1項4号)に該当する可能性があります。
「浪費」とは、破産者の地位、職業、収入及び財産状態に比して通常の程度を超えた支出をすることをいいます(東京高決平成16年2月9日)。
したがって、破産者がちょっとでも競馬をすれば直ちに「浪費」に該当するわけではなく、破産者の収入状況、財産状況などと投じた金額との相関関係により「浪費」に該当するかが判断されることになります。
✔東京高決平成16年2月9日についてはこちら▶コラム:知人の営む事業のための資金援助が「浪費」に該当するとした裁判例
3 裁量免責について
仮に「浪費」に該当したとしても、裁量免責事由が認められれば、最終的に免責が認められることになります(破産法252条2項)。
弁護士が受任通知を送った後も隠れて競馬をしていた場合等は金額によっては悪質と評価されることになりますが、そうでなければ、破産手続開始決定後に破産手続に協力すれば裁量免責が認められることが多いと思われます。特に、破産の原因が主として浪費の場合、破産管財人より、一定期間、家計収支表を作成するよう指示されることが多いと思われますが、その場合は指示どおりしっかり作成することが求められます。
4 最後に
以上、競馬と免責決定について説明しました。破産手続一般については関連記事をご参照ください。
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