1 はじめに
株取引やFXを行い、損失を作り、借金が膨らんでしまい、自己破産をするに至るケースもあります。このような株取引等が、破産法252条1項4号の「賭博その他の射幸行為」に該当し、これによって「著しく財産を減少させ」たと認定されれば、免責不許可となりえます。そこで、以下では、破産法252条4号について説明していきます。
2 破産法252条1項4号
「賭博その他の射幸行為」は、投機性のある取引をすることで直ちに該当するものではありません。破産者の資力や判断能力を超えた取引を行って過大な債務を負担した場合に該当することなります。
また、当該行為が「賭博その他の射幸行為」に該当するとしても、その行為「によって」「著しく財産を減少させ」たことが必要である。
3 裁量免責について
1 はじめに
「賭博その他の射幸行為」に該当したとしても、「裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」とされています(破産法252条2項)。
射幸行為の場合、
・射幸行為によって費消した金額の多寡及びそれらの行為を継続した期間
・射幸行為をしていた時期等
・破産者が破産手続に誠実に協力したか否か
・他の免責不許事由の有無、程度等
を総合考慮し、裁量免責の当否の判断がなされることになります。
以下、各要素について、補足していきます。
2 射幸行為によって費消した金額の多寡及びそれらの行為を継続した期間
数ある考慮要素の中でこれで最も重視されることになります。過去のケースでは、約1年間にわたり、200万円に満たない株取引をしていたケースにおいて、裁量免責が認められました。
3 射幸行為をしていた時期等
弁護士に債務整理を委任した後、射幸行為していたり、破産手続開始後に隠れて継続している場合、免責を不許可とする方向に働くことになります。
4 破産者が破産手続に誠実に協力したか否か
破産者が、自ら行った射幸行為の内容を破産管財人に対してすべて正直に説明したり、家計簿を作成して生活態度を改めるなどしていることは、免責を許可とする方向に働くことになります。
4 最後に
以上、株取引・FXと免責について説明しました。株取引やFXを行い、損失を作ってしまい、借金が膨らんでしまった場合でも、破産手続開始決定後、破産手続に誠実に協力するなどにより裁量免責が認められる余地があります。
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