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コラム:遺言による廃除の裁判例

2024.04.22
1 はじめに

被相続人は、著しい非行があった相続人の相続権を無くすことができます。これを廃除といいますが、廃除には、生前廃除(民法892条)、遺言による廃除(民法893条)の2種類があります。

遺言による廃除の場合、遺言の効力が発生した後、遺言執行者が家庭裁判所に対し廃除の請求を行うことになります(民法893条)。そして、生前廃除に比べて、「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があった」(民法892条)を基礎づける証拠が乏しいので、認容率は高くはないと言われています。

以下では、原審が遺言による廃除請求を却下したのに対し、抗告審が廃除請求を認めた裁判例を紹介します。

 

2 大阪高決令和元年8月21日
1 事案の概要

被相続人は、公正証書遺言において、長男が「しばしば殴る蹴るの暴行を加えるなど虐待を繰り返し、また、重大な侮辱を加えたことを理由として」、長男を被相続人の推定相続人から廃除するとの意思表示をしました。

そこで、遺言執行者は、本件遺言に基づき、長男を推定相続人から廃除する審判を求めました。

抗告審は次のような理由により廃除請求を認めました。

 

2 陳述書の信用性

長男は、審判において、陳述書を提出しました。そこでは、「平成22年4月の暴行については、会社の業務に関連して被相続人と口論になり、被相続人が殴りかかってきたのに反撃したためである」と記載されていました。

原審は、これについて「申立人が具体的に主張していない暴行に言及するなど、自己に不利益な事柄についても述べていること」などを理由に、一応の信用性を有すると認定しました。

これに対し、抗告審は、長男が「D法律事務所のE弁護士に宛ててファクシミリにより送信した書面」の記載や、陳述書の記載内容に客観的な裏付けがないことを理由に、陳述書の信用性を否定しました。

 

3 暴行の回数

抗告審は、長男が被相続人を暴行するに至った経緯はどうあれ、「当時60歳を優に超えていた被相続人に暴力を振るうことをもって対応することが許されないことはいうまでもない」、「少なくとも3回にわたって暴行に及んだことは着過し得ないことと言わなければならない」と判断しました。

 

4 暴行の結果

抗告審は、「被相続人は、平成22年7月の暴行により鼻から出血するという傷害を負い、同年4月16日頃の暴行に至っては、その結果、被相続人において、全治約3週間を要する両側肋骨骨折、左外傷性気胸の傷害を負って、同月19日から同月23日まで入院治療を受けたのであり(甲1)、その結果も極めて重大である。」としました。

 

3 最後に

以上、遺言による廃除の裁判例を紹介しました。廃除一般については以下の記事をご確認ください。

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