1 はじめに
民法904条の2第1項によれば、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、」具体的相続分の算定にあたり、相続財産から寄与分を控除し、当該相続人に相続分と寄与分を取得させることになっています。
このように、寄与分が認められるためには、条文上、特別の寄与をした者が「共同相続人」であることが必要となります。では、例えば、相続人の妻が被相続人の療養看護をしていた場合、当該妻は「共同相続人」ではありませんが、寄与分として評価することができるかが問題となります。
2 東京高決平成22年9月13日
この点について、裁判例では、以下のとおり、相続人の妻は、相続人の履行補助者として当該相続分の寄与分として考慮することにしています。
「・・・E(注:相続人の妻)による被相続人の入院期間中の看護、その死亡前約半年間の介護は、本来家政婦などを雇って被相続人の看護や介護に当たらせることを相当とする事情の下で行われたものであり、それ以外の期間についてもEによる入浴の世話や食事及び日常の細々した介護が13年余りにわたる長期間にわたって継続して行われたものであるから、Eによる被相続人の介護は、同居の親族の扶養義務の範囲を超え、相続財産の維持に貢献した側面があると評価することが相当である。」
「そして、Eによる被相続人の介護は、抗告人の履行補助者として相続財産の維持に貢献したものと評価でき、その貢献の程度を金銭に換算すると、200万円を下ることはないというベきである。」
3 最後に
以上、相続人の妻による療養看護と寄与分について説明しました。寄与分について一般的なことは関連記事をご参照ください。
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