TOPICS

コラム:相続分の譲渡と相続分の放棄

2024.04.08
1 はじめに

遺産分割調停においては、相続分の譲渡やその放棄が行われることがあります。以下では、それぞれの制度について説明していきます。

 

2 相続分の譲渡
1 条文

相続分の譲渡について民法に明文の規定は存在しません。もっとも、民法905条1項は、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」と定めています。この規定は、共同相続人の一人が相続分を第三者に譲渡することを前提としています。よって、相続人の一人は、遺産分割前、相続分を相続人に対しても譲渡することができると解されています。

 

2 効果

最判平成13年7月10日は、相続分の譲渡の効果について次のとおり述べています。
「共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。このように、相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は、持分割合の数値が異なるだけで、相続によって取得した地位と本質的に異なるものではない。」

 

3 方式

相続分の譲渡は、口頭、書面を問いません。もっとも、遺産分割調停においては、相続分譲渡証明書、印鑑登録証明書を提出することになります。

なお、家庭裁判所は、相続分譲渡証明書などの提出を受けた後、相続分を譲渡した相続人を遺産分割調停手続から排除する旨の決定を行います。相続人はこの決定に対して即時抗告をすることができますが、通常は、相続分譲渡証明書など一緒に即時抗告権放棄書を提出することになります。

 

4 家庭裁判所の運用

まず、調停申立前、相続分譲渡証明書、印鑑証明書が提出された場合、相続分を譲渡した相続人は当初から調停の当事者とはなりません。特に、数次相続で相続人が多数いる場合、調停申立前に相続人から相続分譲渡証明書を取得することにより相手方の数を減らすことができます。

もっとも、遺産の中に不動産があり、法定相続分に基づく遺産共有登記がなされている場合、たとえ相続分譲渡の意向がある相続人がいたとしても、その相続人も当事者として扱わなければいけません。

 

 

3 相続分の放棄
1 条文

相続分の放棄とは、相続人が遺産を取得しない旨の意思表示をすることです。明文規定はありませんが、実務上認められています。

 

2 効果

相続分放棄者の相続分は他の相続人に対して相続分に応じて帰属することになります。

 

3 相続分の譲渡との違い

相続分の譲渡は「契約」になりますが、相続分の放棄は一方的意思表示になります。

また、相続分の譲渡は申立前も可能ですが、相続分の放棄は申立前はできないとされています。

さらに、相続分の譲渡の場合は当該調停が取り下げられたとしてもその効果が維持されるのに対し、相続分の放棄は取り下げ後に申し立てられた新たな調停において当事者となります。

 

4 相続放棄との違い

相続分を放棄したとしても、当該相続人は、相続人としての地位を失うことはありません。そのため、相続債務についての負担義務を免れることはできないことになります。

【関連記事】

✔相続放棄についての一般的な解説記事はこちら▶相続放棄

 

5 方式

相続分の譲渡と同じです。

 

4 最後に

遺産分割について一般的なことは関連記事をご参照ください。

【関連記事】

✔遺産分割一般について解説記事はこちら▶遺産分割

無料相談

無料相談

078-361-3370

078-361-3370

お問い合わせ

お問い合わせ