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コラム:生前贈与と持戻し免除の意思表示

2024.04.08
1 はじめに

相続人の一人が被相続人から生前に特別受益に該当する生前贈与を受けていた場合、その生前贈与分を遺産に持ち戻して相続分を計算することになります(民法903条1項)。もっとも、被相続人が、明示、黙示を問わず持戻し免除の意思表示をしていた場合は、持戻しをせずに相続分を計算することになります(この点について民法903条3項は「被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。」と定めています。)。そこで以下では生前贈与の持戻し免除の意思表示が認められた裁判例をご紹介します。

 

2 東京高決昭和51年4月16日
1 事案

相続人の一人である相手方花子(長女)は、大学卒業の翌年ころより強度の神経症となり、その後入院再発を繰り返していた。花子は、40才に達しながら結婚もできない状態であり、両親の庇護のもとに生活していた。

 

2 判旨

裁判所は、花子が独立した生計を営むことができない心身の状態であることを考慮し、宅地の生前贈与について被相続人の持戻し免除の意思表示を認めました。

「・・相手方花子が強度の神経症のため独身のまま両親の庇護のもとに生活して来た者であり、その後も社会的活動によつて独立した生計を営むことを期待することの困難な心身の状態にあつたという状況下で、相手方星子に対する四筆の土地と区別して特に一筆の宅地のみを相手方花子に贈与することにした点を考慮に入れれば、父被相続人としては相手方花子に対する右贈与については、その贈与にあたり、相続開始の場合にも持戻計算の対象とすることを免除する意思を少くとも黙示的には表示したものと推認できる」

 

3 過去の事例

当事務所が担当した遺産分割において、生前贈与について持戻し免除の意思表示の有無が問題となりましたが、相続人が生前贈与を受けた当時の身体状況等について証拠を取得し、独立した生計を営むことができない心身の状態であることを主張した結果、被相続人による持戻し免除の意思表示があったことを前提とした遺産分割をすることになりました。

 

3 最後に

以上、生前贈与と持戻し免除の意思表示について説明しました。特別受益について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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